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『わがままな情緒』

「い……て」  あまりの羞恥に頬が熱くて、ギュっと目を閉じる。  声に感じるけど、声に欲望は傾けど、それは誘いであって……ちゃんと感じている。  「桃香……せんぱ……」  しがみ付いていた腕を解かれて起き上がった先輩がサイドの引き出しから小箱を取り出した。  かさかさと音を立てて取り出した子袋を破る音。俺はぼーっと見上げていた。  顔を上げなければそれは見えないけど、音は聞こえる。  両腕を顔の横について再び覆いかぶされる。  「……ん……ふぅう…」  口付けをされながら膝裏を持ち上げられて、熱い切っ先がそこに当てがわれるのを感じた。  「響……喋っていい?」  普段よりももっと擦れたその声にゾクゾクと身体が震えた。  「喋って……いいけど……しゃべんなっ」  くすくす笑って、「じゃあ、必要な事だけ、しゃべるから」と返された。  「響……この間よりちゃんと溶かしたから痛くないと思うよ。梓のお墨付きだし」  言いながらグッと強く押し付けられる。  「はあぁ……んっ……」  押し付けては離しを何度か繰り返して、グッと押し入れられた。  「ぅぁあ……ああ……ん」  仰け反るけど、この間のような痛みは感じない。それよりも……じれったさの方が勝って、「あっ……あっ」と甘い喘ぎと短い呼吸を繰り返しながらしがみ付いてしまう。  「響……大丈夫みたいだね」  「しゃ……べんな……」  「俺の声……感じるね。俺も感じてる」 

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