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『わがままな情緒』
肩から背中、わき腹とスポンジがすべる。
俺は桃香先輩に言われるがまま、先輩に背中を向けて壁に両手を付いた。
背中から腰を洗って、その手が尻を撫でる。
「先輩っ」
慌てて振り向くが、「本当、最悪」と呟いて唇を塞がれた。熱い舌が絡んで、逃げても追いかけられて吸い上げられる。
スポンジはまだ俺の尻を撫でていて、反対の手は腰からわき腹を撫でて、壁に突いている腕を撫でた。そのまま手を重ねられる。
唇を離すとぴったりと背中に重なってきた。
スポンジを持っていたはずの手も重ねられて、背中からすっぽりと包まれる。
「響……いい?」
何がいいのか……なんて聞くほど余裕は無くて、後ろから擦りつけられる昂ぶりに煽られて、小さく頷いた。
「……ああ、でも……」
戸惑いがちに話す声は擦れていて、狭いシャワー室に木霊する。
ゾクゾクと身体は震える。
今にも入って来そうなほどにこすり付けられて、「ここにゴムないし」と耳を噛まれた。
「……あ……」
擦り付けられてしゃべられると、身体から力は抜けていく。壁に肘まで付けて、額も付きそうな程だ。
「……響……」
「も……動けない」
ボディーソープの滑りとさっきまでの行為でそこはまだ解れていて……。
「後は俺が責任取ればいいかな」
擦れた声に「ああっ」と声を上げた。ずるっとそれが潜り込んできた。
これまでと違う隔たりの無さに身体が震えた。ズズズッと中を擦る感覚に慄いて「ああっ……あっやぁっ」と引切り無しに声が止まらなくなる。
「響も熱いね」
「止めっ……あっ……」
喋るなと言いたいのに、それさえも声に出来ない快感に飲み込まれる。
自分の声さえそこに響いて、木霊して身体が反応する。
「……んっ……どうしよう。響。持ちそうに無いけど」
なんて色っぽく艶を含んだ声が誘うから……。
「いいからっ……もっと……」
なんて簡単に答えてしまった。
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