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井上と遊ぶ

 井上が就職した頃には陽斗も店のナンバーワンに成り上がっていた。貯蓄も十分貯まっていたので、世話になった井上のアパートを出て、今のマンションに引っ越してきたのだった。井上も一緒に引っ越そうと誘ったのだが、狭い家の方が落ち着くし、ペットが飼いたいから、という理由で断られた(井上は現在、犬2匹と暮らしている)。  陽斗は昔から人と仲良くなることに長けていたので、上京してからも友達は沢山できたにはできたが、そのほとんどがゲイ仲間か事情を知った女友達だった。井上だけが、唯一ゲイの世界とは全く関係のない友達だった。  ゲイであることを隠して生きることは止めたので、上京したてだった井上にも早々に告白したが、それを知っても井上は全く態度も変わらず、当たり前のように受け入れてくれた。それは学生時代、人と違うと苦しんできた陽斗にとって本当に嬉しいことだった。 「ハルくん、映画見いひん? 何個か借りてきてんけど」 「ええよ。ホラー以外やったら」 「おん。そう言うと思うて、違うジャンルのにしたで」  ホラーが苦手な陽斗のことを考慮して井上が借りてきたという映画のセレクションを見てみる。5本中、3本が動物もので、2本は芸能系に疎い陽斗でもなんとなく知っている男性アイドルが主演する邦画だった。 「……これ、全部聞いたことないのばっかりやねんけど」 「え? そう? でも、めっちゃ面白そうやで」 「そうか? まあ、動物もんはお前が好きやから分かるとして、このアイドルも好きやった?」 「おん。前からファンやねん。テレビとかでもいつも頑張ってはるで。同じ関西出身やし、応援したくなんねん」 「そうか……」  陽斗にとっては大して興味のない内容の映画ばかりだったが、とりあえず井上に付き合って見始めた。ところが始まってみると意外にどれも面白かったりして、泣いたり笑ったり悶えたりしながら結局5本全て制覇し、気づけば夕方になっていた。 「腹減ったぁ。健太、ラーメン食いに行こうや」 「おん、ええよ」

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