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長谷川からはるちゃんへ

 ところが、目の前に座った斉藤は、陽斗から目を逸らしもしなければ立ち去ることもなかった。真正面から陽斗を見つめ、真剣な顔で話し出す。 「……俺、ゲイの人と会ったことないからよう分からんけど。やけど、長谷川はそんなんとかひっくるめて長谷川やし。ゲイやって分かったからって、気持ち悪いとか思わへんし。俺もこの性癖のせいでしんどいこといっぱいあったから、きっと長谷川も同じようにゲイってだけでしんどいことあったんちゃうかなって思うし」 「…………」 「やから、しんどさは長谷川の方が大きいと思うけど、少しは理解できるかもしれへん」 「斉藤……」 「ほんで、もしほんまに長谷川が協力してくれるんやったら、俺はめっちゃ嬉しいんやけど……」 「それはええよ、ほんまに」 「ほんまにほんま?」 「おん。ほんまにほんま」 「ありがとう……」  顔を見合わせてふふっと笑い合った。斉藤が遠慮気味に聞いてきた。 「あの……ついでにもう1個お願いしていい?」 「何?」 「長谷川のこと、『はるちゃん』って呼んでいい?」 「……まあ、ええよ。俺のあだ名でもあったしな」 「ありがとう」  斉藤が嬉しそうにお礼を言った。まあ、奉仕すると言ったのは陽斗からなのだから。斉藤のしたいようにさせてやろう。  こうして陽斗は、斉藤の初恋八重歯の『はるちゃん』に代わり、『はるちゃん』と呼ばれて斉藤に奉仕する、普通の友達関係とはまた違った奇妙な間柄となった。

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