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斉藤、出張から帰宅

 そんな風にうだうだと悩んでいる内に、とうとう斉藤が出張から帰ってくる当日となってしまった。陽斗の携帯に斉藤からメールが届く。帰宅は遅くなるが、次の日は有給で1日休みとなっているのでどこかのタイミングで会いたい旨が書かれていた。  陽斗は今日も明日も出勤予定だったので、明日の午後遅くから出勤までの間なら大丈夫だと返事をした。  翌日、午後4時ぐらいに、玄関のチャイムが鳴った。いつも通りに、と自分に言い聞かせて玄関を開ける。10日振りぐらいに見る斉藤の男前の顔が目の前にあった。 「おかえり」 「おん……ただいま」  斉藤が小さく笑って答えた。その笑顔になんとなく違和感を覚えた。疲れてるんかな、と思いながら斉藤を中に招き入れる。 「コーヒー飲む?」 「おん、ありがとう」  斉藤がソファへ腰掛けた。手早くコーヒーマシーンをセットして、斉藤の好きなお菓子を用意してリビングに戻る。 「出張どうやった?」 「ああ、おん、疲れたけど、色々勉強になったわ。やけど、ちょおトラブルがあって、また来週行かなあかんねん」 「そうなん?? 大変やなぁ」 「おん。まあ、仕事やしな」 「アメリカって時間逆やんな? 時差ボケ大変ちゃうの?」 「まあ……。ほんまは今、めっちゃ眠い」 「そうやんなぁ。大丈夫か? 帰って寝た方がええんちゃう?」  そう言うと、なぜか斉藤の顔が一瞬曇った気がした。不自然な沈黙の後、斉藤がちょっと拗ね気味に答えた。 「そんなん……。久しぶりやったから、はるちゃんに会いたかったし。別に後から寝れるし」 「……そうか」  やはり、何かが違う。いつもの斉藤と。それとも自分が斉藤を意識していつもと違うから、違和感があるのか。もしくは、さっき思ったようにただ斉藤が疲れていて機嫌が悪いのか。

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