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思わぬ再会
その2週間後。その日はコンビニのバイトがあった日だった。夕方から夜にかけてのシフトに入り、10時頃に仕事を終えて、夜更けの暗い道を家路に向かって歩いていた。
ふと思い立って、桜が綺麗ないつもの公園を散歩して帰ることにした。気が向いた時に時々寄っていく公園だったが、ここ最近、勉強とバイトに明け暮れていたせいかすっかり存在を忘れていたのだった。
「あれ、もうほとんどないなぁ」
桜は満開を終えて、今はほとんど花びらが散ってしまっていた。それでも、僅かばかりに残った花が懸命に最後の力を振り絞って花びらを広げているのを見て、その力強さに心惹かれて立ち止まる。微かな電灯の光の中でじっとその花たちを見上げていた。
ふと、公園の入り口に人の気配がした。なんとはなしに、そちらの方を向く。
そこには、男が1人立っていた。スーツ姿のすらっとした長身。
え。
真っ暗で顔は良く見えない。見えないけど。その人影には見覚えがあった。
「どうして……」
間違えるわけがなかった。その人影は、陽斗があのマンションの窓から幾度となく見てきた人影だったのだから。
「斉藤……」
斉藤はゆっくりとこちらに近づいてきた。近づいてくるにつれて、斉藤の顔が月明かりと公園の電灯に照らされてはっきりと現れる。その表情は、とても再会に喜んでいるような顔には見えなかった。この上なく不機嫌な顔で、陽斗を睨みながら途中からはスピードを速めてズカズカと進んできた。
「さい……『ハルちゃん!!』」
斉藤は陽斗の言葉を遮って、陽斗の両肩をがっしりと掴むと乱暴に揺さぶった。
「何で勝手におらんくなんねん!!」
「いや……その……」
「めっちゃ捜したんやで!! 携帯も繋がらへんし! ほんまに心配したんやで!! クタクタになって出張から帰ってきて、やっとハルちゃんに会えると思うて行った先がもぬけの殻やった時のこっちの気持ちも考えてくれや!!」
「…………」
「こんな形でハルちゃんと離れるのなん、納得いかへんし!」
「…………」
「ハルちゃん、聞いてるん??」
「……おん……ごめんな……勝手に消えてもうて……」
口を挟む間もなかった斉藤の追求に、素直に謝った。
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