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第3話 彼
彼は、よく体に傷を作ってきた。
「ごめんね、おじさん。毎日傷だらけで。萎えちゃうでしょ。」
彼は、笑いながらよくそう言っていた。
「そんなことないよ。現に、今ガチガチに勃ってる。」
こんな会話をしているが、今は情事の最中だ。
「それは、君が一番ナカで感じて分かってるでしょ。」
何を不安に思ったのかは知らないが、まったくの杞憂だ。
「ぁっ。」
軽く奥を掻いてやると、彼はすぐに腰を落とした。
「んんっ。だって、傷だらけの体なんて、萎えない?」
そう言いながら、彼は俺の首筋に頬をすり寄せる。彼が甘えるときによくする仕草だ。
「萎えてたら今こうなってない。まあ、心配にはなるけどね。」
勿論気になるし、できることなら助けたい。が、彼は詮索されることを望んではいない。強姦しようとした奴が何を気にするのかと思うかもしれないが、俺にも情があるのだ。
「…ごめんね、おじさん。」
彼が、目を伏せて申し訳なさそうに謝ってくる。
「別にいいよ。それより、こっちに集中して欲しいかな。」
どんっ、と、彼の最奥を抉る。とんがりを引っかけ、ナカを掻き回す。
「あっ。んんんっ。激しっ。ぁあっ。」
みるみる、彼は快楽の渦へと堕ちていく。
「あっ。そこっ。気持ちっ。」
肌を赤く染めあげ、気持ちよさそうに腰を落とす。
「ねっ、気持ちぃっ?」
どこか不安そうに、そう尋ねてくる。
「うん、気持ちいいよ。」
そんな彼の不安を掻き消せるように、奥を深く突く。
「んんんっ。」
俺の絶頂と同時に、彼のナカがビクビクと痙攣する。
「ね、おじさん。ひとつお願いがあるんだ。聞いてくれる?」
お互いに絶頂を迎え少し力を抜いた時、彼が上目遣いにそう尋ねてくる。どこか機嫌を探るような視線を向けながら。
「あのね、俺を捨てないで。」
泣きそうな声で、耳元に囁かれる。
「殴ってもいい。蹴ってもいい。壊れるまで犯してもいいから、俺の事を愛して。」
縋りつくような声で、震えた体で、そう囁かれる。
(何かあったのかな…)
彼は弱音を吐くことはあまりしない。本質は傷つきやすく、繊細で脆いだろうに、いつも笑顔の下にそれを隠す。
「捨てないで…お願い…」
声も、手も、体も震えている。殴られるとでも思っているのだろうか。蹴られるとでも思っているのだろうか。怒鳴られるとでも、拒絶されるとでも思っているのだろうか。
「!」
腰にあった腕を、背中へと伸ばして彼を抱き寄せる。
「おじさん…?」
不安げな瞳で、こちらの表情を窺われる。
「心配しなくても、俺はずっと前から君の虜だよ。」
だからこそ、あの日襲ってしまった。
「…そう。ありがと。」
ふにゃりと、彼が硬かった表情を崩して笑う。
「!」
それは、何物にも代えがたい喜びだった。
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