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出会いと始まり①/出会いは最悪
俺は人生で一番と言っていいほどの後悔がある。
それは今から三年ほど前の「運命の人」との出会いの話。
俺が蓮二さんと初めて会った場所は、驚くなかれ「蓮二さんの部屋」だった──
「初めまして」のご挨拶がなぜか蓮二さんの部屋の中。俺は泥酔状態で蓮二さんに介抱してもらったらしい。見ず知らずの男を介抱し、自分の部屋に連れてこなきゃならない状況ってどんだけだよ……ほんと蓮二さんてば天使じゃね?
あの時の俺は仕事仲間と合コンの真っ只中だった。初めて行く飲み屋でそこそこ可愛い女の子たち。でも、いつもの事ながらピンと来る子もおらず、はっきり言ってつまんなかったんだ。
そして自慢じゃないけど俺は酒に弱い。普通の人よりほんのちょっとだけ酒に弱い。いや、酔っ払っても楽しく酔えるからいいんだけど、その日は疲れてたんだろうな。なんだか酔いのまわりが早くて、おまけに女の子の絡みがウザくて飲み過ぎてしまった。これ以上飲んだらまた潰れてしまうってわかってたんだ。でも面白がった同僚にしこたま飲まされ結局トイレから動けなくなってしまった。
記憶があるのはこの時まで。
次に気が付いた時にはもう蓮二さんの部屋だった。
目が覚めたら裸で知らない部屋。そりゃ驚いたよね。だって俺、合コンしてたんだよ? しかも気になる子もいなかったってのにさ、やべえ! って焦って横見たら裸の男が眠ってるんだもん。
正直言って昨夜の合コン相手の女の子じゃなくてホッとした。そりゃ俺は気が多いと言われても文句は言えないことをしてきたけど、相手は誰でもいいってわけじゃない。見境なく喰ったりしない。
でも、その男も裸だった。なんとなくスッキリしている自分の体の違和感に血の気がひいた。布団に隠れてよく見えなかったけど、その男の寝顔をチラッと見て、ああ俺ならやりかねないな、ってすぐに察してベッドから飛び降り土下座して謝った。
蓮二さんは苦笑いしながらも、裸で寝るのはいつもの事だし自分も少し酔っていたから気にするなと言ってくれた。もちろん心配しているような事もないから、と。蓮二さんが言うには、俺は自分で服を脱ぎ捨て、勝手に眠っていたらしい。ホッとしながらも、その時改めて蓮二さんを見て俺は息を呑んだ。これは今までにない感情だった。
そう。俺はこの時初めて「一目惚れ」というのを実感したんだ。運命なんだと本気で思った。
そもそも俺は「男」だ。俺がよくてもこの人は「男」の俺に対してなにも思わないかもしれない。それでもいてもたってもいられず、この縁をこれっきりにしたくなくて、俺はこの日をきっかけに蓮二さんに猛烈にアプローチを始めた。
「後悔」と言ったけど、この俺の醜態がなかったら蓮二さんとは出会えていなかったわけで、当時の俺には「グッジョブ!」と言ってやりたいんだけどね、いくら聞いてもその時の俺の状況を蓮二さんははっきりと教えてはくれず、何やらはぐらかすような口ぶりだから、やっぱり俺は酷く失礼なことをやらかしてしまったのだろう。だからグッジョブだけどグッジョブじゃないんだ。うん、複雑……
ちなみに合コンの時の同僚に、あの時俺に散々酒を飲ませたのは競争相手を減らすため、と後から言われてムカついたけど、あれがなかったら蓮二さんとは出会えてなかったから文句は言わず、笑って受け流した。俺、偉い。
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