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出会いと始まり②/尻軽からの純愛
俺は蓮二さんと出会うまで、たくさん恋愛をしてきたと思う。
友達も多いし多分俺はモテる方だ。「友達」から「恋人」と呼ばれるような関係になるのもよくあった。愛情表現であるキスをしたり、体の関係を持ち、文字通り裸の付き合いをするようになればそれは恋人。そうじゃないのは友達…… はっきり言って俺は恋焦がれるような「恋愛」と言うのがよくわかっていなかった。
気持ちのいいことは好き。求められれば「じゃあ付き合うか」という具合に軽く付き合う。好きだの愛してるだの言い合って、そして飽きたり面倒になってきたら別れる。そういうのが「恋愛」だと思っていた。来るもの拒まず、去るものは追わず。適当に楽しんで相手は常に変わっていた。
今思うと、とんだ尻軽でバカな男──
でもしょうがない。だってその時の俺は蓮二さんに出会えていなかったのだから。
俺は人を好きになるのに「性別」を気にすることはなかった。だから男とも付き合ったし、もちろん体の関係も持った事もある。でも俺の周りにはそういう奴は少数だった。ほとんどが異性を好きになり恋愛をする。だから蓮二さんの部屋でお互い裸で目を覚ましたあの日ほど焦ったことはなかった。
蓮二さんは否定したけど、明らかに事後の感覚のある俺の体。俺に気を遣い「裸で寝るのが習慣になってるから」と自分も酔いのせいにして謝ってくれた。その蓮二さんの態度を見て、俺は図々しくも少し希望を持ってしまった。
嫌悪はされていない。出会いは最悪だったけど、このまま友達として関係を築いていきたい。蓮二さんならそれを許してくれるんじゃないかと期待した。
俺は今までにない程みっともなく焦りながら、蓮二さんの連絡先をゲットした。
「また会いたい」と、たったそれだけを言うのに、恥ずかしくて照れ臭くて、顔から火が出るほど緊張した。
こんな感情、初めてだった。
蓮二さんはそんな俺に、呆れたような複雑な表情を見せながらも連絡先を教えてくれた。あの時の蓮二さんの目には俺はどういう風に映っていたんだろうな。
嘘みたいなこの運命の出会いから、俺たちがちゃんとお付き合いをすることになった時のことは、まるで昨日のことのように覚えている。こんなに好きになった人はいなかったから、この関係が壊れないよう俺は蓮二さんとの時間を大事大事に育んできたんだ。
俺にとってその期間はまるで初めて意中の人とデートをする中学生のように、ドキドキとそわそわの連続だった。
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