二回目のデートもこの前と同じ店で二人で飲んだ。 　相変わらずメッセージのやりとりは素っ気ない。この人の場合必要最小限のことしか返信をしてくれないから、なおのことそう感じてしまうのだろう。でもこうやって面と向かって話をしてれば蓮二さんの僅かな表情の違いも読み取れる。この人はツンとしてるけどきっと照れ屋なんだろうなって俺は気付くことができた。 「蓮二さん、仕事大変じゃない？」 「ん？　そんなことないぞ」 「だって人見知りのところあるでしょ？　先生なんて人前でいっぱい喋んなきゃだしさ、話すの苦手だったりしない？　あ！　もしかして俺に対してだけ？」 　蓮二さんは口数も少ない。静かに俺の話を聞いてくれる。でも嫌そうには見えなかったから思ったまんまを聞いてみたけど、言いながら少し不安になってしまった。 「俺、男なのに蓮二さんのことを「口説く」なんて言ってるから、もしかして実はちょっと困ったな……なんて思ってない？」 「いや、それはないよ。うん、大丈夫……」 　何か言いたそうな顔をして、歯切れ悪くそう言ってくれた。大丈夫、だけど全然大丈夫じゃないような表情に俺はますます不安になった。これっきりアプローチもできなくなるなんてあり得ない。俺と蓮二さんは「運命」なんだ。そんな強欲さを隠しながら、俺は蓮二さんの目を見て「何か言いたいことがあるんじゃないの？」と聞いてみた。不満に思うこととか、何か気になることがあるのなら正直に言って欲しい。蓮二さんに俺のことで何かを我慢させるなんて嫌だった。 「うん……特に」 　口数が少ないのは何も言うことがないからじゃない。蓮二さんはきっと俺以上に色々と考えているんだと思う。「特に……」なんて言いながら、小さく噤んだ唇に違和感を覚えた俺は黙っていることができなかった。 「蓮二さん？　俺なら何言っても平気だよ？」 　俺の前なら繕わないで自然体でいてもいい。蓮二さんならきっとどんな姿でもかっこいいと思うし愛おしいと思うから。俺のダメなところも容赦なく言ってもらって構わない。俺にはそんな遠慮は必要ない。 「いや……うん、えっとな、そこは気にしなくてもいいから……」 　だいぶ躊躇いながら、やっと蓮二さんが口にした言葉。俺は理解できずに「ん？」と間の抜けた声を発してしまった。てっきり俺のダメなところとか迷惑に思っていることをズバッと言われてしまうのかと思っていたから、困った顔をして俺を見る蓮二さんと暫し見つめ合ってしまい恥ずかしくなった。 「だから、そこは気にする必要はないから」 「えっと、ごめん、そこってどのあたり？」 「ははっ……どのあたり？　って。いやさ、智が男だからって俺は何も困ることはないよってことだよ」 　俺は蓮二さんは他のみんなと同じだと思っていた。男の俺が言い寄ってきたら戸惑ってしまうだろうと思っていた。いや、そう思っていながらも図々しく「好きだ」とアプローチはしてるんだけどさ、俺は女の子とはそもそものスタート地点から違うと思っていたんだ。 「え！　それって俺のこともちゃんと恋愛対象で見てくれるってこと？」 「そう言ってる。てか声デカいよ……」 　頬を赤くして、蓮二さんは自分が「ゲイ」だということを俺に打ち明けてくれた。 　俺はこの時目の前にあった一つ目の壁がバーン！　と音を立てて砕け散り、一気に視界が開けたように感じた。 　 　ヤバイ！　こんなの嬉しすぎでしょ！ 　嬉しさのあまり蓮二さんの顔が見られなかった。ちょっと顔を伏せ「やっぱり運命なんだ」と思わず呟いてしまった。