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始まりは突然に②/由々しき事態
抱きしめられ、感無量でうっとりしている間に気がついたらベッドの上。
おまけに猛烈色っぽい蓮二さんに押し倒されていた。
俺、まあまあチョロい……
「キス、してもいいか?」
俺を押し倒し見下ろしている蓮二さんが、スッと俺の顎に指先を添える。
なんなの? 一々言動が格好いいんですけど!
「うん……」
さっきから圧倒されてしまって、情けなく頷くことしかできない俺。フッと笑った蓮二さんの顔が近付き、優しく触れた。
ゆっくりと探るように口内に侵入してくる蓮二さんの舌先を、俺もそれに応えるように絡めとる。キスなんて今まで何度もしてきたけど、この初めての蓮二さんとのキスに感極まりすぎて呼吸困難になってしまいそうだった。
「あ、蓮二さん待って、俺先にシャワー浴びてくるから……」
蓮二さんの手が俺の服の中に忍び込んでくるのがわかり、慌てて体を起こし仕切り直す。
この状況はどうにもおかしい。なんで俺が蓮二さんに押し倒されてんだ? なんでこんなに圧倒されているんだ? 今までの経験上、これは初めての感覚。何か違う、と、違和感しか湧かなかった。
モヤッとしたまま逃げるようにバスルームに入り、とりあえずシャワーを浴びる。
急展開のこの状況に嬉しくないわけがない。何度夢見て妄想してきたと思ってる? 蓮二さんと恋仲になるために、俺は大事に二人の時間を育んできたんだ。イメージしていたのと違って一足飛びにラブホまで来てしまったけど、この違和感は何なのだろう? そう頭を捻ったら、ある考えが浮かんでしまいハッとした。
──もしかして、蓮二さんは俺を抱こうとしているのでは??
いや、まさか! いや、うん、そうだよ! 蓮二さんだって「男」なんだ。
俺は自分の気持ちばかりで失念していた。こうなることだってちょっと考えればわかること。蓮二さんが当たり前に俺を抱こうとしているなんてあり得ないことじゃないんだと今更ながら気がついた。
恋愛対象に性別は関係のない俺とは違い、蓮二さんはゲイだ。それなら今までの相手は「男」だということ。その際、蓮二さんはタチの立場だったのかもしれない。俺が当たり前に蓮二さんを抱こうと思っていたように、蓮二さんだって何の疑問もなく俺を抱こうとしていたっておかしくはない。
「マジか……」
俺が「抱かれる」なんて考えられない。これは蓮二さん相手だからって関係ない。そもそも初めて見た時から今の今まで、俺の妄想ではずっと抱き潰してきたのだからこれが逆転するなんて俺の中では絶対にありえないことだった。
「いやいやいや、ダメだぞこれは……」
思わずそう呟き、キュッとシャワーを止めた。
これはダメだ。
由々しき事態だ。何とかせねば──
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