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始まりは突然に④/譲れないこと
「俺、本当にこんな気持ちになったの初めてなんだ。一目惚れ。もう絶対にこの先もずっと蓮二さんしか考えられない」
晴れて恋人になってくれた蓮二さんに、ベッドの上で俺は改めて告白をする。
どれだけ言葉を並べても、俺の中にある蓮二さんへの想いは全て伝えることが難しい。言葉になって出てくれば出てくるほど、何だか薄っぺらく感じてしまいもどかしかった。
「……好きが溢れて止まらないってさ、こんなふうに思ったの初めてなんだ。全部、全部、蓮二さんが初めて……」
「嬉しいよ。俺も智と同じだよ? ずっと智と過ごしてきて、俺もどんどん好きになっていった。日々のデートがもどかしく思うくらい」
蓮二さんは照れ臭そうにそう言って、俺のことを抱きしめてくれた。「やっと触れることができて嬉しい」と、何度も俺にキスをする。全身で「愛おしい」と表現してくれているのが伝わってきて、やっぱり俺は嬉しくて泣きそうになってしまった。
「でもね、蓮二さん──」
緊張してドキドキと煩い鼓動が蓮二さんにも伝わってしまいそう。でもこればっかりははっきり伝えないといけないんだ。俺は軽く息を整え、意を決して言葉を続けた。
「蓮二さんも今までたくさん恋愛をしてきたと思うんだけどさ、どうしてもこればっかりは俺、譲れなくて……」
「うん?」
「俺に、俺に蓮二さんのことを抱かせてください!」
一瞬キョトンとした蓮二さんだったけど、ふふ……と小さく笑って俺を見た。
「そんな声を大にして言うことか? 智がどうしてもって言うならいいぞ。そんな気負って言うことでもないだろう?」
意外にも蓮二さんは嫌がらず、すんなり俺の言うことを受け入れてくれた。もしかしたらどっちも経験があったのかもしれない。本当は聞いてみたかったけど、俺以外の男との話なんて嫉妬しか湧かないし、更に蓮二さんが俺の知らない男に抱かれてたなんて聞かされたら絶対悔しくて泣いちゃいそうだから聞けなかった。
それにしてもよかった。ここで蓮二さんに「いやだ」と言われてしまったらどうしようって、その先のこと、正直あまり考えていなかったから。
「ありがとう……俺、絶対蓮二さんに痛いことしないから。すごく優しくするから……安心して俺に委ねて。でもね、今日はしない。また次の時にね。今日はこうやって一晩一緒にいるだけでいいから」
「うん、わかったよ」
蓮二さんは俺の言葉にコクコクと小さく頷き、そっと肩を抱いてくれた。
きっと蓮二さんだって心の準備が必要だと思う。
余裕のある蓮二さんに限ってまず無いとは思うけど、もしかしたら動揺しているのを隠しているのかもしれない。俺のことを抱く気でいた蓮二さんの気が変わらないうちにさっさと……としたいところだけど、それはフェアじゃないような気がしてできなかった。もし、万が一「やっぱり嫌だ」と言われてしまったら、その時はしょうがない。俺だって腹を括る覚悟は、あったりなかったり……うん、まぁそうなったらその時に考えよう。
俺たちはそのまま自然にキスを交わし、改めて「好きだ」と伝え合い二人ベッドに横になった。
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