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それぞれの「初めて」⑦/素直なままで
「ねえ、ごめんね。蓮二さん、そんなに泣かないで」
お互い欲を吐き出し、気付けば蓮二さんはグズグズに泣いてしまっていた。こんなふうになるとは思っていなくてちょっとびっくりするくらい。嫌だったのかな? 辛かったのかな? でも俺、そんな下手クソじゃないと思うんだけどな……
「智が……俺を求めてくれないんじゃないかって、ちょっと不安になってただけ……セックスできて嬉しかったから……」
涙ながらにそう言う蓮二さんがアホほど可愛い。さっきから嘘みたいな出来事ばかりで夢じゃないかしらと不安になる。
「何それ、可愛いんですけど」
「は? 可愛くなんかない」
「いや、逆に求めすぎてドン引きされるの目に見えてるからね、俺、これでも気を使って我慢してたんだけど? わかって……俺だってあれからすぐにでも蓮二さんのこと抱きたかったんだからね」
気を使って、というか、わけわからなくなってテンパってただけだけど、蓮二さんが可愛すぎてそんなのどうでもいい。とにかくガッついて嫌われたくなかったし余裕がないなんて思われたくなかった俺の小さなプライドだ。
「智は俺に遠慮なんてしないでいいから。思ったこと、ちゃんと言ってほしい……」
やっぱり普段から素直な俺なのに、言いたいこと我慢して黙っていられると何を考えているのかわからなくて不安になるのだと蓮二さんに言われた。
「それを察してやることは俺にはできない。不器用な自分を棚に上げて図々しいかもしれないけど、智にはそのままでいて欲しいから……」
カッコつけないでそのままでいてほしいと笑う蓮二さんに吸い込まれるようにしてキスをする。俺から見たら蓮二さんはちっとも不器用なんかじゃないんだけどな。本人がそう言うならきっとそうなのかもしれないな、とホワホワする頭で適当に考えた。俺のいい加減で適当なところは短所でもあり長所でもある、ってことでOK?
「遠慮、しなくてもいいの?」
「当たり前だ。素直な智が俺は好きだ……」
「ねえ、ならもう一回したい。いいよね? 体、大丈夫だよね?」
「え? えっ? ちょっと待て……そういうことじゃない。あっ、智? あっ、嫌だ……」
大好きな蓮二さんを前にして遠慮しなくていいなんて言われてしまえば、時間の許す限りずっと蓮二さんを堪能してたい。それでも今日は初めての大切な日だし、俺はガッつき過ぎずにその後の二回戦までに留めておいた。
「やり過ぎ!」と蓮二さんはぐったりして怒るけど、これでも空気読んで自制したつもりなんだけどな──
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