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言いたいこと、伝えたいこと④/ありがとう
「ねえ! 一緒にいたイケメンって誰? そのイケメンと親しげに飯食いに行ってたって何? 言い寄られてたって何!」
美典は蓮二さんに会いに行った日に、蓮二さんが何やらイケメンに店の前で手を握られ言い寄られていたとメッセージで教えてくれた。いい男二人が揉めててよく見たら蓮二さんで驚いたって…… 俺なんかよりよっぽどその男の方が蓮二さんとお似合いだとも。美典は俺に対してちょっとばかし意地悪だ。
「ん? あぁ、慎太郎のことか? 別にイケメンでもないだろ」
「そういうことじゃない! だからその慎太郎って誰よ? 名前呼び! なんか嫌だ」
蓮二さんは笑いながら、その慎太郎というのは最近よく昼を一緒に食べに行っていた奴だと教えてくれた。あぁ、俺の弁当をちょいちょい断っていた原因の奴ね。プライベートな相談事なども聞いていたから懐かれてしまったなんて言うけど、ちょっと笑い事じゃねえんじゃね? 美典が見たのは別に蓮二さんが言い寄られていたわけじゃなく、その慎太郎が家に行くと言い出したからそれを拒否していたんだと。ちょうどいいタイミングで美典と会ったから、蓮二さんの恋人が美典だと勘違いをした慎太郎は大人しく帰っていったって…… いやいや、何それちょっと待って。美典が蓮二さんの恋人? 変な勘違いしてんじゃねえよ慎太郎。おまけに蓮二さんが出て行ったあの日の夜も、一人でいる蓮二さんに付き合い食事をしたなんてさ、そんなの聞かされたんじゃ心穏やかでいられないでしょ。まぁ大体の事情はわかったけどちょっとムカつく。いや、大いに腹が立つ。
「何それ! 仲良すぎ! そのイケメン、蓮二さんのこと狙ってない? 俺許さないかんね」
「いや、そんなわけねえだろ。そもそも慎太郎に女の相談されてたんだぞ? 俺はただの先輩認識だろ」
蓮二さんてば、ついでみたいに「智以上のイケメンなんていないだろ」なんてしれっと言っちゃってさ、なんなの? そんな急に照れるじゃん、やめて……
「蓮二さん、俺のこと大好きすぎじゃね?」
「だから、そう言ってる……初めて会った時から変わらずずっと大好きだよ、智」
「……もうやめて、めっちゃ嬉しい」
蓮二さんは俺に体重をかけるように寄りかかり、徐に顔を寄せ「キスしていい?」と聞いてきた。そんな蓮二さんがたまらなく格好良くて、俺は小さく頷き唇を重ねる。
怒ったりキュンキュンしたり、俺ってばやっぱり蓮二さんに関してはチョロくてしょうもない。恋は盲目……その通りだよ文句ある? 恋する相手は蓮二さんだけで十分だもの。
「蓮二さん……俺を選んでくれてありがとうね」
「ん? こちらこそだぞ? 智、愛してる」
「うん、俺も」
今日のこの蓮二さんの態度は特別なのはわかってたけど、それでもこの大喧嘩を境に蓮二さんは以前よりも俺に対してわかりやすく愛情表現をしてくれるようになった。多少は照れがあるのか相変わらずのツンデレっぷりは健在だけど、それでもお互い少しずつ変化があったのには変わりない。
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