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言いたいこと、伝えたいこと⑤/蓮二の思い
後日美典からメッセージが届いた──
智には内緒で連絡先を交換させられていたんだっけ。
別に内緒にしなくても、と言ったら「智は嫉妬の塊で小さい男だから教えなくていい」と美典は笑った。それでも一応智には美典と連絡先の交換をしたことを話しておいた。隠すのもそれはそれでおかしいような気もするし。智は「陰で俺の悪口言うんじゃないよね?」なんてバカな心配をしてたけど、「蓮二さんは俺のなのに」とぶつぶつ言っていたから、美典の言う通りちょっとは嫉妬しているみたいで可笑しかった。
「あ、美典ちゃんからメッセージきた」
「美典? は? なんだって? なんて言ってる? 要件は? 俺のこと? なんなのあいつ」
「……内緒」
「はぁ? ほらもう! やっぱり! 俺のこと変に言ってるんだ絶対! 美典の奴ムカつく! 蓮二さんいいよ、返信なんてしなくて! 無視無視! 既読無視!」
ちょっと揶揄っただけなのに、智は騒ぎながら俺のスマートフォンを覗き見しようとしてくる。その妨害のせいで美典からの要件はしっかり確認できてないけど、ぱっと見、大したことではなさそうだった。俺は落ち着いたら返信でもしようと思いながらまとわりついてくる智をぎゅっと抱きしめる。
「まったく、子どもみたいだな」
「……蓮二さんと美典が意地悪する」
「智? ほら機嫌なおせよ。智の笑ってる顔が俺は好きだぞ。まあどんな顔でも好きなんだけどな」
「………… 」
「そんな口尖らせてたらキスしたくなるだろ。智、いつまでも怒ってないでキスして」
「もう、なんだよ蓮二さん。ふふ、調子いいな」
智は笑って軽く俺にキスをする。
改めて「好き」だの「愛してる」だの言葉にするのは照れ臭くて抵抗がある。でも智みたいに明るく少し大袈裟なくらいに言えば恥ずかしさがちょっとはマシになるかな。そうわかってからは俺でも割とスムーズに言えるようになったと思う。
こんなことで智がこれ以上ないくらい嬉しそうな表情を見せてくれるなら安いものだ。辛そうな泣き顔を見るより、嬉しそうな笑顔を見る方が何千倍、何万倍もいい。言葉一つで安心してもらえる。こんな簡単なことすら俺はできていなかったのだと反省した。
最愛の人とすれ違い、大喧嘩するのはもうまっぴらゴメンだけど、この事がなかったら俺はいつまでも大切なことに気がつけなかっただろう。些細なことでも大きなことでも、ちゃんと相手に伝わっていなければ意味がない。
「智、愛してる」
「もう、蓮二さんてば恥ずかしいからもうやめて。てか誤魔化されねえからな! 美典の要件なんなんだよ、教えろよ」
「……内緒」
プンスカ怒る智をソファに押し倒し、強引にキスをする。
俺の言動で怒ったり照れたり色んな表情を見せる智が愛おしくてしょうがない。初めて会った時から変わらないこの思いは、きっとこの先もずっと同じで変わらない──
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