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二人の「これから」②/サプライズ
思いがけないサプライズはもう一つあった。
「どうしちゃったの? 今日ってなんか特別な日だっけ?」
「いや、別に……蓮二さんと久々のデートだから……」
「予約してあるんだ」と連れてこられたのは、ちょっと敷居の高めなレストランだった。智がヘアカットをし、服装までいつもと違ってめかし込んでいるのはこのせいかと納得がいく。でもそれなら先に言ってくれれば、俺だってそれなりにきちんとした格好ができたのに……そう思って少し文句を言うも「蓮二さんはいつだってかっこいいから大丈夫」と、これまた恥ずかしげもなくサラッと言われてしまい、何も言い返せなかった。
智と付き合って三年。小さな喧嘩もちらほら、最近は別れるんじゃないかってくらいの大喧嘩もした。改めて互いの存在を意識し、俺にとっては智はなくてはならない大切な人で、きっと智も同じように思ってくれていると思う。景色のいい窓際の席に案内され、少し畏まって俺をリードする智を見て俺はそんな思いを強くする。
「仕事お疲れ様」と笑顔の智にグラスを向けられ、俺も軽くグラスを合わせた。
「ほんと、こんなサプライズ聞いてない」
「内緒だからサプライズなんじゃん」
食べ慣れないコース料理を楽しみながら、智とのゆったりした時間を満喫する。「ちょっと緊張する」なんて照れ臭そうにしている智を見て、酒のせいで少し開放的になってしまった俺は、考えなしに思ったことをそのまま口に出してしまった。
「プロポーズじゃあるまいし、こんな……」
「えっ……」
口に出してからハッとした。こんなシチュエーションにプロポーズの場面を重ねるなんて、とんだロマンチストだ。我ながら恥ずかしすぎるし、きっと智はそんなことは微塵も思っていない。現に俺の発言に困ったような顔をして黙ってしまった。
「ごめん今のナシ、おかしいよな、気にすんな」
「え、うん……」
ほら──
なんだか変な空気になってしまった。こんなことで智が変な気をまわさなきゃいいけど……と心配になる。
そりゃ、智と一生添い遂げたいとは思っているし、俺だって人並みには結婚や老後のことなど、将来のことも考えたりする。それでもこれから先も今のこの状況が変わることはない。男同士の俺たちは婚姻を結ぶことはできないとわかっているから。
わかりやすい智が、明らかに俺の一言で動揺しているのがわかり辛くなった。全く期待をしていないわけじゃないけど、期待したところで俺たちには無理な話だ。当たり前にわかっているし、俺は今のままで十分に幸せだと感じている。俺がこんなプロポーズを望んでいるなんて智に誤解してほしくないし、困らせたくもない。
だからこそ、浮かれて軽はずみなことを言ってしまったことに後悔した。
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