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二人の「これから」⑤/智の思い

 俺の知らないところで美典と蓮二さんが急激に仲良くなってしまったように思えて、俺は複雑な気分だった。  美典が口にした「蓮二さんとデートしてきた」という言葉に大いに嫉妬した俺は、美典に対抗すべくちょっといい店を予約して、蓮二さんを驚かそうと美容院にも走った。  我ながら子どもじみてて恥ずかしい。でもしょうがない。それだけ俺は蓮二さんに夢中なんだ。  蓮二さんは自分に自信がないのか知らんが、あまり俺と出かけることはしない。いや、デートとかするけど、やっぱりちょっとよそよそしいというか距離を感じて、並んで歩くことですら他人のように接してくることがある。別に男同士だからって仲良く歩いてても問題ないし、自分が思うほど他人は俺たちのことなんか見ちゃいないと思うんだよ。俺からしてみたら蓮二さんは自意識過剰に見えなくもない。そんなことは蓮二さんには口が裂けても言えないけど……  付き合う前とか、付き合い始めは時間を合わせてたくさんデートもしていたと思う。いつからだろう、二人で出かけることが少なくなったのは。  だから今日のデートはめちゃくちゃ浮かれてたし、特別に思っていた──  待ち合わせの場所に一人佇む蓮二さん。いつ見ても人目を引くいい男。あの人が俺の「彼氏」だと思うとにやけてしまう。少し時間に遅れてしまった俺を見つけた蓮二さんの表情がパアッと明るくなるのがわかって、胸がキュンとなった。あんな可愛い顔、反則だ。 「へへ、蓮二さん驚かそうと思ってさ、てか髪を切っただけだけど……どう? ちょっとイメチェンしてみた」 「智が益々かっこよくなってて見惚れた」なんて恥ずかしげもなくサラッと言ってのける蓮二さんに、俺の方が照れ臭くなってしまい焦ってしまう。こんなはずじゃなかったんだけどな。素直可愛い蓮二さんに調子が狂った。  今日は俺が蓮二さんにかっこいいところを見せるんだ、と意気込んで、いい店を予約した。ちょっと緊張するけどなんとか蓮二さんをエスコートし、ディナーを楽しむ。見れば見るほど蓮二さんが格好良くて、付き合いたてのようにドキドキしてしまう。酒の弱い俺は舞い上がって酔っ払ってしまわないように酒を控えめにしてたけど、ほろ酔いで機嫌の良さそうな蓮二さんを見ているだけで、幸せで酔っ払ってしまいそうだった。あの「プロポーズ」発言だって、きっと酔いの勢いでポロッと出ただけの言葉だろう。現実主義な蓮二さんが俺との結婚なんて微塵も思っていないことはちゃんとわかっている。いや、お互い二人でずっと一緒にいたいと思っているのもわかっているけど、その人生設計の中に「結婚」は入っていない。  蓮二さんは失言したと焦っていたようだけど、俺は大丈夫だとわかって欲しくて、その後もその話題に触れることはしなかった。

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