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第5話

「ひえ! こういうのやめへん!? け、結婚は、したいけど。こういうのはもう小生おじさんやから! な!」  な! で通じ合えるなら、この世界から言語の壁は取り除かれている。ばたつく足を押さえつけていると、何だか興奮してきた。このまま一発やってやろうか。芳村さんのズボンのベルトを外しにかかると、芳村さんはギャーギャーワーワーにぎやかになった。 「ほんと! ちょっと! 待とう!? 肇助手のことは好きやけど! ライクよりラブ! つまりアイラブユー!」 「は……」  思わず手が止まった。今、とんでもないことを口走らなかったか。  見下ろせば、美中年は耳まで真っ赤になって、しまったという顔をしていた。 「え…と…」  視線がぶつかる。数秒。おれはため息をついた。 「ハイ冗談。この一週間で一番の胸糞案件ですよ」 「えええええなんで!」 「だって、芳村さんがおれを好きなわけがない!」 「なんの自信!?」  ああもう、ああもう、と芳村さんはひとしきり思案してから、おれの服を掴んだ。ぐっと引き寄せられて、唇と唇がぶつかる。何やってんだこの人は、と思うより先に、芳村さんの舌が侵入してきた。ちゅ、と音を立てながら、味わうような口付けをされる。  唇が離れたときは、頭のどこかがぼんやりとしていた。なぜか怒ったような顔をして目をそらす芳村さんに気がついたときには、おれは別の意味でブチ切れていた。  芳村さんのベルトに手を伸ばせば、芳村さんの手とぶつかった。ここまできてよすなんて無茶な話だ。無理矢理ベルトを外してやろうとしたら、芳村さんの手が自らベルトを外しに掛かった。腰を浮かして、ズボンを脱ぎさる。下着は白のブリーフ。すでに少しきざしていた。何を考えているのか分からない変人のこの人にも、生理的な機能が備わっているのか──刹那的な気持ちになった。  下着を脱がそうとしたら、芳村さんは眉を寄せておれのズボンに触れた。ベルトはしていないから、そのまま脱がしに掛かってくる。おれはその手を打ち払った。

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