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不良高校のチャラ男VS進学校のギャル①

「まこちゃん日曜日ここに来るって。」俺は目の前でポテチを食べながら漫画を読んでいる新に言う。 「はぁ?あのチビがなんでここに来るんだよ。」新がしかめっ面で言う。蓮大好きっ子の新にはまこちゃんの存在は大変気に入らないらしい。 「まこちゃんのことどう思う?」蓮がいないのをいいことに新に尋ねる。 まこちゃんに実際に会ったのは蓮以外では俺と新だけだから一度話をしておこうと思った。 「気に入らないな。蓮があんな地味なチビのどこに惚れたのか見当もつかない。何より男だろ。」 「あと、ここに呼び出すことも反対だ。部外者のあの地味なチビをこの学校に呼ぶのはともかくとして、この場所に入れることはリスクにしかならねぇぞ。」 意外だ。単細胞の新でもちゃんとそこは考えていたのか。それをそのまま口にだすと怒られた。近所でも有名な不良高校である藤ヶ丘高校の一角を占めるこの場所は特別な生徒しか入れない。 近所でも悪名高き我が藤ヶ丘高校では、馬鹿で短気で喧嘩っ早い生徒が多い。そんな藤ヶ丘では絶対的なリーダーとなる人が統率し、指揮をとらないとめちゃくちゃになるということで代々生徒の中からそのリーダーが選ばれていた。そして、この学校ではそのリーダーとなるのが生徒会長であり、その会長を支える人たちが生徒会執行部である。生徒会には他の生徒達は逆らえないという民主主義の現代においてまるで独裁国家のような風潮があった。 故に藤ヶ丘の生徒会長なんてものはただの名前だけの役職ではなく、ヤクザでいうところの組長のようなものである。実際、藤ヶ丘の生徒会長をやった卒業生たちが裏社会のボスなんて噂も多々ある。蓮はそんなこの学校で、入学してまだ半年たらずで生徒会長を務めている。何故生徒会長になったのかは簡単だ。喧嘩が強いからである。弱肉強食。強いものが上に立つ。動物と同じである。俺と新は蓮と中学が同じであったが、その頃から蓮は喧嘩が強く、数々の伝説を作っていたし、その強さと存在感で周りから恐れられていた。一方で、困った奴を見過ごせない優しい奴であったため、蓮に憧れを抱く奴らも少なくなかった。高校入学当初から喧嘩の強さとその圧倒的存在感で周りの羨望の的であった蓮に(この不良ばかりの学校では、蓮を怖がる奴よりも憧れる奴のほうが多かったらしい)以前の生徒会長が喧嘩を売るのにそう時間はかからなかった。そして、ものの数秒で元生徒会長を返り討ちにし、蓮はさらに伝説を作り、この学校の生徒会長となったわけである。生徒会はもともと生徒会長が信頼できる人達の集まりであり、会長が変われば生徒会も変わるということで、もともと蓮と仲が良かった俺と新が蓮に誘われて生徒会に入った。 この場所は藤ヶ丘高校代々受け継がれてきた生徒会室(といっても古い倉庫を改装した部屋であるが)であり、生徒会か、生徒会と親密な生徒しか入れないのである。そんな場所に全く部外者で他校の生徒のまこちゃんが立ち入るというのは他の生徒の顰蹙を買うだろう。歴代の生徒会長の中には、他校の彼女を連れ込んだ奴もいたそうであるが、男子高校生(しかも評判の悪い藤ヶ丘)で彼女持ちというのは一種のステータスであり、なおかつ見せびらかすほどの可愛い彼女を連れ込んでいるとなるとますます周りから尊敬されるため、ようは自分の価値をあげるために連れ込んできたという場合がほとんどだ。男で地味で冴えなくて弱そうなまこちゃんでは、蓮の価値は全く上がらないどころかダダ下がりである。日向学園はそこそこ偏差値が良い学校ではあるが、この学校の馬鹿達に学力の高さなど自慢しても意味がない。 「悠斗、お前はどうなんだよ。」新が不機嫌そうに聞いてくる。 「うーん。まこちゃん今のところ害はないと思うけどこの場所に呼ぶのはねぇ。ある意味安全だけど、ある意味危険だから。展開としてはとても面白いけど。」 「お前なんでもかんでも面白がるのやめろよ。」 面白さを優先させるのは俺の悪いくせだ。 常に面白いことがないか探している俺にとって蓮が地味で冴えない男の子にぞっこんであるというこの状況はとても面白いのである。 しかし、あまり面白がっている状況でもない。まこちゃんと付き合うことで蓮の評判が下がることも問題ではあるが、もっと最悪な場合はまこちゃんが藤ヶ丘のろくでもない生徒とつながっている場合、蓮が危険にさらされる可能性もある。喧嘩っ早いこの学校では、不良高校の頂点に立つという野望を抱く奴らは多い。生徒会長が周りの支持を得られなくて学校がめちゃくちゃになるというのはこの学校ではよくある。だから近所の評判は最悪なのである。蓮はカリスマ性もあるし、自分がトップになりたいというわけでなく、なりゆきで生徒会長になってしまったが、なったからには仕事をきちんとこなす責任感もある。蓮が会長になってからはこの学校も例年よりはずっと落ち着いたのである。まともに授業ができるくらいにはなったし、退職する教員も随分減った。(この学校では教師がしょっちゅう変わる)。そんなわけで蓮は先生達からも信頼は厚い。 しかし、そのことを面白く思わない生徒もいるわけで、まこちゃんを使って蓮を会長から引きずり落そうという考えを持つ奴らがいないとも限らない。 「まこちゃんに関しては情報が少なすぎるからね。ちょっと情報収集してくる。」 「どうせ女だろ。女遊びも良いけどほどほどにしろよ。いつか刺されるぞ。」新が呆れたようにいうが、女の子たちの情報網はなめてはいけない。 しかし、今回はただの女の子というわけではなさそうである。 俺は、藤ヶ丘の制服をみてもまったくビビる様子のない、親切な背の高いギャルに連絡をとった。

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