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不良高校のチャラ男VS進学校のギャル②

佐藤とマックを食べた次の日、藤ヶ丘高校の胡散臭い笑顔を張り付けた吉岡悠斗という男からアタシは呼び出されていた。 クラスの女子はひとしきり騒ぎ立てた後、イケメンだったけど藤ヶ丘はねぇという結論に達していた。アタシはぶっちゃけタイプではない。笑顔で愛想が良くてイケメンで。女の子は全員自分を好きだと思っているタイプだ。この呼び出しも、アタシから佐藤のことを聞き出すつもりであろう。昨日はあの目つきの悪い桐生という男があまりにも必死だったから声をかけたが、この吉岡という奴はいかにも信用できない。 アタシは呼び出されたチェーンのファミレスの席に向かった。 「ユカちゃん。今日も可愛いね。今日は来てくれてありがとう。ユカちゃんともっと話がしたくて呼んじゃった。」とろけるような笑顔で吉岡が言う。 評判の悪い藤ヶ丘の制服を脱ぎ、センスのよい私服を着ているもんだから、近くの女子達がこちらをちらちらみている。こちらの警戒を解くためにわざわざ着替えてきたのか。それも腹立だしい。 アタシは無言で席につくと店員を呼びドリンクバーとチョコレートパフェとステーキ定食のご飯抜きを頼んだ。 今日はコイツの奢りだ。アタシはドリンクバーで自分のオレンジジュースを取ってきて席に戻った。 「アンタ、アタシのこと気づいているんでしょ。女の子扱いしなくていいから。」アタシははっきり言ってやった。こいつは多分、初めて会ったときからアタシのことに気づいている。 「なんのこと?」吉岡がとぼけたように言う。しかし、その顔はさっきのとろけるような笑顔とはうって変わりこちらに探るような目線をむける。 「アタシが男ってこと。」アタシはオレンジジュースに口をつけて答えた。 アタシの本名は佐々木豊。仲の良い子達はユカと呼ぶ。自分の性別に違和感を覚えたのは物心ついてからだ。しかし、それを否定せずにのびのびと育ててくれた両親のおかげでアタシは髪を伸ばし、スカートを履いてきた。今も化粧をし、女子の制服を着て学校に通っている。周りもアタシが男だと知りながらも女の子扱いしてくれる。 「なんだ。ただのお人よしのオカマじゃなかったのか。意外に賢いんだね。ちなみに本名なんていうの?」吉岡は猫被ることはやめたらしい。 「教えない。アンタも顔だけかと思ったけど意外に賢いじゃない。」アタシは冷たく言う。 こいつはただの偏差値が低い不良高校のヤンキーではなさそうである。 「ひどい言い様。でも、流石に君が女の子じゃないのはすぐに気づいたよ。のどぼとけがあるし、声も低いし、背も高いし、骨格的にもね。まあ。蓮と新は気づいてなさそうというかそもそも性別にこだわりがないから。俺は、伊達に女の子の身体見てきてないからね。」 苦笑している吉岡にアタシは思いっきりしかめ面をした。 「君は男が恋愛対象じゃないの?そんな恰好しているのに。」男が好きなら落とせると思ったんだけどなと残念がっているがざまあみろだ。 「少なくともアンタはアタシのタイプではないわね。アタシが男装したほうがイケメンだもん。」 ごめんなさいね。 アタシはイケメンには興味がないの。アタシは自分の顔を見慣れているから。 「これはなかなか手強いな。じゃあチビで地味な冴えない男がお好み?」吉岡がにやにやしながら聞く。 「それは佐藤のことを言ってんの?」 「他に誰のこと言ってると思ったの?」 完全にからかってやがるなこいつ。アタシは頭にきている自分を落ち着かせながら答えた。向こうのペースに乗せられたら負けよ。 「佐藤は少なくともアンタよりは良い男よ。で、アンタその佐藤のことを聞きにきたんじゃなかったの。アンタのその態度じゃ何も教える気にならないんだけど。」 「それは困った。どうしたら教えてくれる?」 へらへらする吉岡をみてアタシは溜息をついた。それが人にものを頼む態度か。佐藤の交友関係を広げるのに良いかなと思って、昨日、佐藤に桐生と仲良くしてみるように提案したことを心底後悔する。桐生は真っすぐで良い奴そうだったが、こいつは駄目だ。 「まあ、君に色仕掛けは無理そうだと分かったから、取引しない?」悠斗は相変わらずへらへらして言う。 取引? 「君も大事な佐藤くんが得体の知れない変な奴らに関わるのが心配でしょ?俺も同じで大事な大事な蓮が惚れた男が変な奴じゃないか心配なわけ。お互い情報交換しようよ。」 アタシは吉岡をまじまじ見る。 昨日の感じだと、おそらくこいつは桐生の下っ端だしその言葉に嘘はなさそうだ。 桐生は良い奴そうであるし、佐藤も仲良くする意欲がある。こちらとしても佐藤の安全を確保するためにも情報は欲しいところだ。いくら、桐生が良い奴そうだとオカマの勘で感じたとしても、相手は不良高校のヤンキーである。 「アンタが先に情報よこしなさい。それ次第で答える。あと、ここアンタの奢りだから。」 「喜んで。」吉岡が満足したように笑った。その余裕のある笑みにもっと注文しとくんだったと後悔した。

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