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地味な俺と不良高校の生徒会と友達の作り方②
「桐生さん。この間の返事ですか。」
俺が言葉を切り出すと桐生さんは少し青ざめた表情をする。
「それはいい返事か。悪い返事か。」
おそるおそる聞く桐生さんに俺は端的に答える。
「はっきり言うと保留です。」
「じゃあ、わざわざ言わなくてもいいんじゃないか?」桐生さんがややほっとしたように言う。
しかし、こちらとしては伝えなくてはならないのだ。
「まずは友達から始めましょう。俺は桐生さんのことを何も知らないので、お互いのことをよく知ってからにしませんか?」
俺のことをよく知ったら桐生さんも俺が好きとかいう勘違いに気づくかもしれない。
桐生さんはやや頬を赤らめて「それは肯定的な返事ととらえて良いか?」と聞く。
この場合どっちが良いのだろうか。例え俺と付き合っても茨の道を歩くだけな気がするが。
「まあとりあえずもうちょっと仲良くならないことには判断がつきませんね。」
俺は正直に答えた。
しかし、もう一つ疑問がある。桐生さんはその疑問を俺の代わりに言ってくれた。
「俺はどうやったらお前と仲良くなれるのだろうか?」
そこなのである。自慢じゃないが、人と深く付き合う必要性を感じなかった俺に仲が良いといえる友達はいない。仲良くなるとはどうするのか?
「それは、俺が聞きたいくらいですね。俺は友達いないですし。」俺は素直に答える。
「とりあえずここにきておしゃべりでもすれば良いんじゃない?友達ってそういうもんっしょ。」
俺らのやり取りを面白そうにみていたパリピ代表のような悠斗さんが言う。
「はぁ?ここにこのチビを勝手に入れるってことかよ。俺は認めねぇぞ。」新さんが猛反対する。
こいつは俺のなにもかも気に入らないらしい。しかし、ここは家のようだとは言え他校のしかも生徒会室である。
「俺が勝手に入ってもいいんですかね?一応生徒会室なんですよね?」
「歴代の生徒会長には彼女連れ込んでた人とか、他校の友達連れてきてた人もいたしいいんじゃない?」律樹さんが答える。
この学校も相当校則はゆるいらしい。
「そうしろ。」桐生さんが俺に言う。
新さんが不満そうに桐生さんを見るが桐生さんの言うことには逆らえないらしい。
「それと、俺のことは蓮でいい。」蓮さんの珍しく笑った顔をみて俺は不覚にもドキッとしてしまった。
「おい、チビ勘違いすんなよ。俺はお前と仲良くするつもりはないからな。」
新さんがそう言うがこっちこそこんな不機嫌ピアス野郎と仲良くするのは願い下げである。口には出さないが。
「僕とは仲良くしてね。」
「律樹の仲良くには気を付けほうが良いよ。まこちゃん。」
にこやかな律樹さんの言葉に、にやにやしながら悠斗さんが言う。
「どういう意味ですか?」俺が聞くと律樹さんがいつの間にか俺の膝の上に載っている。
「試してみる?」
耳元でささやかれてやばそうな空気を察した俺は首をふった。大丈夫です。
「残念。この学校の子達はあらかた食べつくしたから。たまには新鮮で可愛い子とヤリたかったな。」残念そうに律樹さんが言う。
何をやる気だったんだこの人は。
「とんだゲテモノ食いだな。律樹は。そんな地味なチビでチンコ勃つのかよ。」
ドン引きしたように新さんは言うが俺もその意見には賛成したい。
「何も知らないうぶで可愛い子に教え込むのは興奮するでしょ。まだ童貞でしょ誠くん?」上品な顔で失礼なことを聞く。
事実ではあるが。
「ショタでノンケで童貞なんて最高。僕なら極上のひと時を君にあげられるんだけどな。」そう言う律樹さんは相変わらず優雅である。
育ちの良さそうな坊ちゃんかと思っていたが、とんでもない変人である。男子校の藤ヶ丘高校にてほとんど食べたということはそっちもいける人なのであろう。ここにいる3人ともそういう関係なのかとても聞きたかったが知らぬが仏だ。
「律樹は誰でもヤッてんじゃん。ノンケとか童貞とか男とか女とか関係なしに。俺は女の子しか無理だけど。」呆れたように悠斗さんが口を出す。
「女の子も可愛いし良いけどね。でも男の子のほうが挿れたり、挿れられたりできるし、頑丈だからね。挿れた女の子の顔はすぐ忘れちゃうけど、挿れられたペニスの形はなかなか忘れられないもんだよ。」律樹さんがうっとりとした様子で言う。
上品で綺麗な律樹さんから飛び出す下ネタはミスマッチすぎて別の人がアテレコしているのかと勘違いしそうである。
「お前童貞なの?だっせー。」むかつくことを言ってくるのは新さんである。
新さんはさっきから俺のもってきたクッキーをぼりぼり食べている。取り上げるぞ。
「誠は、今まで付き合ってきた奴は?」蓮さんが顔を赤くして聞いてくる。
「友達もいなかったので彼女もいたことないですよ。」悲しいがこれが事実である。
「蓮さんは彼女とかいたんですか?」そういえば蓮さんはもともと男が恋愛対象なのだろうか?
「彼女はいたが、向こうから告白されて付き合ったことしかなかった。俺から告白したのは誠が初めてだ。」蓮さんがさらっと言う。
「それは・・・。光栄です・・・。」なんと答えればよいのか分からなかった俺は適当に言葉を濁した。
蓮さんほどのイケメンだったら大層女の子にもてるであろう。俺が女の子でなかったことが運の尽きだ。
「しかし、みんな1年生なのに生徒会ってすごいですね。蓮さんなんか会長だし。」俺は話題転換をこころみる。
「この学校はちょっと特殊なんだよ。蓮が前の生徒会長を喧嘩でぶちのめしちゃったから。」悠斗さんが答えてくれるが、どういうことだ。
「喧嘩が強い人が生徒会長になるんですか?」
なんて野蛮な学校だ。ある意味実力主義なのだろうか。
「まあ、そんな感じ。」
「ということは他のみなさんも喧嘩強いんですか?」
強面の蓮さんとかいかにもヤンキーな新さんはともかくとして、甘いマスクで優男の悠斗さんと上品で綺麗な律樹さんは喧嘩に結びつかない。
「当たり前だろ。」新さんが不機嫌ながらも答えてくれた。
「俺は暇つぶしでちょくちょく喧嘩してたからね。蓮と新には勝てないと思うけど。」
喧嘩って暇つぶしでするものなのか。
「僕は寝技では負け知らずだからね。高校生なんて可愛いもんだよ。」
律樹さんは相変わらず品のある顔で品のないことを言う。
「でも、僕達は喧嘩が強いというより、蓮君に誘われたから生徒会に入ったんだ。」
「仲が良かったんですか?」
「蓮と新と俺は中学一緒だったからね。律樹は蓮とクラスが一緒だったんだよ。」
そうだったのか。
中学一緒で高校でも仲良しで一緒に生徒会活動をするような友達は俺にはいないため、なんだか眩しくみえる。
世間話もそこそこにまた来てねという悠斗さんと律樹さんから声をかけられ、蓮さんからは待ってると言われ新さんは不機嫌そうに睨みつけられ、俺はこの生徒会室を後にした。
帰りの校門までは悠斗さんが送ってくれた。
すれ違う生徒から、
「あの地味なチビ何者だ?」
「さっき律樹さんと一緒に生徒会室のほうに行ってたぞ。」
「それで帰りは悠斗さんが見送り?」
などという言葉が聞こえる。
めちゃくちゃ目立っている。そりゃあそうだろう。みんなの憧れらしい生徒会が他校の見ず知らずの生徒を連れて歩いていたら目立つことこの上ない。多分悠斗さんがついてきてくれていなかったら、確実にからまれていただろう。
「目立ってますね。」
「目立ってるね。まあ、他校の制服着てる時点で目立つよ。」
「私服のほうが良いですか?」
「私服だったら小学生だよ。」悠斗さんが笑っているが笑いごとではない。
「まあ、制服で来てもらってかまわないよ。他の生徒にはなんか上手いこと言っておくからいつでもおいで。」悠斗さんが笑顔で言う。
「悠斗さんは俺が蓮さんに関わることには賛成なんですか?新さんはあんなに不機嫌なのに。」
「新は蓮のことが大好きだからね。俺は全然まこちゃんと蓮が付き合っても構わないよ。面白そうだし。」
面白いと言われても。
「でも、蓮や俺達に危害が及ぶようだったらまこちゃんの身の安全は保障できないなぁ。」そう言う悠斗さんの目が笑っていない。
冗談ではなさそうだ。しかし、俺なんかがこのヤンキー達に危害を加えられるとでも思っているのだろうか。
「今のところは心配なさそうだけど。」悠斗さんの言葉にほっとする。
こうして俺は藤ヶ丘を後にした。
今日は友達のいなかった俺に他校の友達ができたらしい。俺にとっては大きな進歩だ。多分、友達だと思っていいのだろう。
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