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地味な俺と不良高校の生徒会と貞操の危機②

「どういう状況だ。」不機嫌そうな蓮さんと笑っている悠斗さんが立っていた。 不機嫌オーラを隠そうともしない蓮さんに、律樹さんは「お帰り。早かったね。」と明るく声をかける。勇者だな。 「律樹。」蓮さんが律樹さんを睨む。相変わらず迫力が凄い。 「はーい。」律樹さんがいそいそと服を着る。 律樹さんもなんだかんだ蓮さんの言うことはよく聞くらしい。 「新君がさっさと誠君を渡さないからヤリそびれちゃったじゃない。」律樹さんが蓮さんに聞こえないように小声で新さんに文句を言う。 「それは良かった。俺も邪魔したかいがあった。」新さんが答える。しかし、新さんがいてくれて助かった。 「新さん、ありがとうございます。おかげで貞操を奪われずに済みました。」 「別に。こんなとこでお前らのセックス見たくないから声かけただけだ。自分のためだよ。」 こいつは随分とツンデレらしい。意外に新さんは優しいのかもしれない。 「気持ち悪っ。ニヤニヤすんなチビ。あととっとと離れろ。いつまでしがみついてんだ。」 随分な言われようだ。 「えらく汚れてますね。」俺は新さんから離れ、蓮さんと悠斗さんを見て言った。 「うん。ちょっとした喧嘩をね。」悠斗さんが答えてくれるが、そんな日常茶飯事みたいに言われても。 「俺もそっちが良かった。」新さんが羨ましそうに言う。 「蓮と新が喧嘩に行っちゃったら、戦力偏りすぎちゃうよ。俺と律樹だけでなんとかできるか分からないし。こっちにも向こうの奴ら一応来たんでしょ?」 「来たのは来たけど雑魚だった。すぐ終わっちゃったからつまんねぇ。」 「こっちもそんなに変わらないというか、蓮がほとんどやったから俺は特に何もしてないよ。」 「まあ、そうだろうな。」 「本当にみなさん不良なんですね。もしかして喧嘩するために休日も学校来てます?」俺は話している新さんと悠斗さんを横目に律樹さんに聞く。 ここの人達が思いの外優しいから忘れていたが、喧嘩が日常茶飯事なところをみると、流石藤ヶ丘の生徒といったところだろうか。しかも、聞いている感じだと喧嘩の規模がでかい。俺とは全く別次元の話をしている。 暴走族の勢力争いのようだ。 「まあ、藤ヶ丘の生徒会ってだけでも、他の高校のヤンチャな子達からは目をつけられるしね。勉強はしないくせにそういうのは年中無休みたい。俺も最初は驚いたよ。今時、拳でてっぺんとってやるみたいなヤンキー漫画の暑苦しいノリまだやっているのかと思って。馬鹿で短気な子達は貴重な青春喧嘩しかすることないんだろうね。セックスしてるほうがよっぽど健全だし楽しい思うんだけど。」 セックスと喧嘩のどっちが不健全かといわれるとどうなのだろうか。 「律樹さんは喧嘩好きじゃないんですか?」 「やる必要は感じないね。問題になるだけだし、僕の将来につながるわけでもないし。」 「そういうもんですか。」 「でもまあ発散する方法が喧嘩かセックスかっていう違いだとは思うけどね。」律樹さんがつぶやくように言った。 「まあ、発散する方法は人それぞれですからね。人と関わらない僕よりはよっぽど、どちらも青春しているような気もします。」 喧嘩するにもセックスするにもまず人ありきである。そういう相手がいて、それに生き甲斐を感じているならば悪いことではないのかもしれない。あくまで双方の合意を得て、人に迷惑かけない範囲でする場合であるが。 「ふうん。じゃあ僕と発散してくれる?」 「お断りします。」なんでもかんでもセックスに持っていくのはやめて欲しい。しかし、律樹さんはそんな僕の反応に対して笑いながら僕の頭をなでた。 さっきまでの妖しい笑顔ではなく、なんていうか年相応だった。 「律樹。さっきから誠に近い。」まだ不機嫌なままの蓮さんがいつの間にか近くに来ていた。 「蓮君は案外独占欲が強いんだね」 「・・・ああ。だから、今から誠はこっち。」俺は蓮さんに手を引かれた。 「蓮君は素直すぎ。からかいがいがなくてつまらないな。」という律樹さんの声をききながら。 蓮さんは俺を律樹さんから離したと思ったら俺を抱きしめた。 「律樹に何もされてないよな?」蓮さんの低い声が俺の耳元で聞こえる。俺はこくこくと頷いた。あれは多分何もされてないのうちに入るだろう。多分。 「そうか。」蓮さんはそう言って笑みをみせ、くしゃりと俺の頭をなでた。 機嫌はもう直ったようである。 耳が熱い。俺の体温は少し上がった。

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