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地味な俺と日向学園文化祭1日目と不良高校の生徒会①
文化祭1日目。日向学園文化祭は2日にかけて行われる。
佐々木さんプロデュースによる今日の俺は黒のロングスカートの清楚なメイド服に長い黒髪のウィッグを二つに結んでいる。執事姿のイケメンな女子達と可愛いメイド服の男子達がおかえりなさいませと接客するメイドカフェと執事カフェはかなりの大盛況であった。
その大盛況の一旦を担っているのが我らが佐々木さんである。予想通り、イケメン執事の佐々木さん目当てで他のクラスや他の学年の女子達が列をなしてきているのだから、本当に罪な人である。
俺も何人かに写真を撮られ、本当に男の子なんですかと褒められた。その言葉を褒め言葉と受け取ってよいのかは謎であるが流石佐々木さんクオリティである。
買い出しから教室に戻ると何やらざわざわしている。
「あの制服って藤ヶ丘だよな。」
「ばりばりのヤンキーが何故日向の文化祭に?」
「ねぇでも全員イケメンじゃない?」
案の定教室を除くと蓮さん達である。
この風変りなカフェの中でもめちゃくちゃ目立っている。何故よりによって藤ヶ丘高校の制服を着てきたのだろうか。私服でくればちょっと派手なただのイケメン集団だっただろうに。男子生徒達は藤ヶ丘の制服とガラの悪い(主に蓮さんと新さん)出で立ちにビビったように遠巻きにしているし、女子達は遠巻きにしながらも藤ヶ丘の制服を着ていてもイケメンなこの4人組をちらちら見ている。
そこで怖いもの知らず、なおかつイケメンバージョンの佐々木さんが接客しているもんだから、女子達は佐々木さんに惚れ直しことだろう。
「ユカちゃん久しぶり~。最近全然ライン返してくれないじゃん。」悠斗さんそういえば佐々木さんと連絡先交換したっていってたな。
「何でアンタのライン返さなきゃいけないのよ。」佐々木さんは塩対応である。
「すごくかっこいいね。僕とも連絡先交換しない?」律樹さんは相変わらず優雅な仕草で座っている。
しかし、佐々木さんを狙う視線が熱い。佐々木さんは不純な気配を感じたのか、ゴミでもみるような目でその申し出をお断りしている。
「あのチビいないじゃん。笑ってやろうと思ったのに。」きょろきょろしながら新さんが店内を見渡している。
そこで、俺がこちらを見ていることに気づいたのか蓮さんと目があった。
蓮さんが破顔した。
その笑顔は反則だ。俺はちょっと蓮さんの笑顔に弱いかもしれない。
「誠。」蓮さんが俺の名前を呼ぶ。
教室中の視線が俺に集まる。それはそうだろう、クラス一の地味な男がこんなに目立つ不良と友達なんて。しかし、友達を文化祭に呼ぶということをしたことがなかった俺としてはちょっと、いや、実はかなり、ここに4人が来てくれたことが嬉しい。
「みんな来てくれたんですね。嬉しいです。」俺は頬がゆるむのを抑えきれずに言った。
「当たり前だ。」蓮さんの顔は真っ赤である。
「随分可愛くなってるね。食べちゃいたいくらい。」
「本当に最初誰かと思ったよ。蓮よく気づいたね。」
律樹さんと悠斗さんが驚いて俺を見る。当たり前だ。佐々木さんプロデュースをなめてはいけない。
「お前・・・。マジで?」一番驚いているのは新さんだ。
絶句している姿はとても爽快である。どうだみたか。しかし、その顔が少し赤い気がするのは気のせいだろうか。
「誰が化粧したと思ってんのよ。当たり前でしょ。ってか佐藤。アンタ桐生だけでなく、こんなヤバそうな奴らと付き合ってるわけ。聞いてないんだけど。」
佐々木さんが不機嫌そうに言う。ヤバそうな奴らというのは主に律樹さんを指している。流石佐々木さん。勘がするどい。
「ヤバそうとは失礼だね。僕はとっても良い子なのに。僕がいかに良い子で真面目か証明するよ。二人きりで。」
笑顔の律樹さんに対して佐々木さんの視線は冷たい。
「まこちゃん写真とろうよ。」悠斗さんがスマホを出して言う。不機嫌そうな顔で、しかし、気配りができる佐々木さんがスマホを受け取ろうとした。
「ユカちゃんも一緒にとろうよ。注文2つするから。あと、俺ら4人とも注文したから一緒に写って良い?」
「それは大丈夫ですけど。」
誰かこの不良達の写真を撮ってくれるだろうか。
悠斗さんはそんな俺たちにお構いなしに近くのクラスの女の子に声をかけた。
佐々木さんと仲の良い女子である。急に話掛けられて驚いたようだったが、悠斗さんのとろけるような笑顔に赤面しつつ受け取った。
こうしてイケメンな不良高校生4人とイケメンに変身したギャルの佐々木さんと女装した地味な男子高校生の俺という実に異様な組み合わせの写真が撮れたのである。
最後に愛想のよい悠斗さんと律樹さんが教室にいる生徒達に2週間後にある藤ヶ丘の文化祭で僕たち脱ぐから来てねとその綺麗な顔を存分に使いながら声をかけていた。不良というよりアイドルのような雰囲気の甘いマスクの悠斗さんに微笑まれて女子達はキャーキャー言っているし、藤ヶ丘の制服でさえ優雅に着こなす中世的で綺麗な律樹さんの妖艶な笑みに男子達は顔を赤らめている。顔が良いというのは大変得なものである。最初は遠巻きにしていた生徒達もすっかり心を開いている。
蓮さんはさっきの分の注文に追加して、さらに2回注文をした。
「誠、写真2枚撮っていいか。」
「いいんですか?」さっき1枚撮ったのに、あと2枚もいるのだろうか。そんなに安くもないだろうに。
「誠だけのが欲しい。」蓮さんは真顔でなんとも照れることを言う。
「せっかくだから一緒に撮りませんか?」そうして蓮さんは俺のピンショットを1枚と、ツーショットで1枚撮って満足気である。
そんな俺と蓮さんをみて佐々木さんは「アンタ達って・・・。」と言いながらなんともいえない表情をしている。
嵐のような4人がまた後でねと去ってからはどういう関係なのかとクラスの人たちに質問攻めである。佐々木さんはもっと質問攻めであったが。
「荒らすだけ荒らして帰っていったわね。」佐々木さんが溜息をついた。
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