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地味な俺と優雅で年中発情期な御曹司の一夜の過ち①
「最近学校はどうだ?」向かいに座っているお父様が聞いてくる。
「順調ですよ。」僕は食事の手を止めてお決まりのセリフを言う。
仲睦まじい親子の外食なんかではない。月に一度の食事を兼ねた僕への査定である。転校するかしないかの。
「文化祭に向けての準備は滞りなく進んでいます。各クラスの参加率もほぼ100%と言っていいほどであるし、外部の集客も前年度の20倍以上は確定です。」
去年までが少なすぎたというか、そもそも文化祭があってないようなものであったが。日向学園の文化祭をきっかけに人脈を作った僕達は他の文化祭にも顔を出し、自分達の文化祭の宣伝をしまくった。ツイッターで日向学園の誠君とミスコンで優勝した佐々木さんとの写真を上げたことも好感度があがった一因である。
そういえば新君の様子が日向学園の文化祭の後はおかしかったが、杞憂だったようだ。次の日にはいつものうるさくて元気な新君に戻っていた。
「あんな高校としての機能をまるで果たしていなかった屑高校に行事なんて必要だと思うか。文化祭なんかをして外部の人達と問題起こして警察沙汰にでもなったらどうするつもりだ。そんなことになったら、お前は責任とれるのか。」
仮にも自分が融資をしている高校に対してその言い草。お父様がお金だけだして何もしてこなかった結果あの不良高校が誕生したのである。しかし、お父様は自分が直接関わっていない高校に関してはいくらお金をだしていようとも関係ないらしい。利益だけあげれば良いのだ。偏差値が低くて素行が悪いが高校だけでも卒業させたいという親は少なくないから、ああいう高校にも需要はある。
「今のところ問題はおきていませんし、むしろ僕が生徒会に入ってから問題の数は減っています。授業にも真面目に取り組んでいます。」
これは蓮君の功績が大きい。
授業は真面目に受ける蓮君が授業中に喧嘩をおっぱじめた生徒達にうるせぇと一声かけるだけで次の日から授業中に騒ぐ生徒はいなくなった。そこから授業中に騒ぐとあの桐生蓮にボコされるというかなり尾ヒレのついた噂がながれ(その噂は僕が流したんだけど)、他のクラスも授業態度は比較的真面目になったのである。騒がないだけで聞いていない生徒は多いが。
「じゃあ、文化祭なんてしている暇なんてないだろう。期末テストに向けて真面目に勉強でもしていたほうがいいいのではないか。」
「お言葉ですがお父様。あの不良高校の生徒達に必要なのは達成感です。やれば自分達でも成功できるという実感です。それが勉強の意欲につながると思いませんか。」
期末テストなんてあってないようなものだ。今まで勉強する気がなかったから馬鹿なのである。そういう生徒達はこちらが勉強しろなんて言って押さえつけて命令しても逆効果だ。
「文化祭で成績が上がるとでも?」お父様が馬鹿にしたように笑う。
「成績に直接関わるかどうかはおいといて、集中力と最後までやり遂げる力を身に着けさせるのです。それに、お父様がお金だけだして放っておいた悪名高き藤ヶ丘の評判を良くする必要がありますから。」
「評判なんて今更だと思うがね。それより進学率や就職率をあげるほうが評判はあがる。」
その評判の悪さがあの不良生徒達に拍車をかけていることにお父様は気づいていない。どうせ俺達藤ヶ丘だし不良だし喧嘩するしか能がないというあの子達を。
「お父様は数字が大好きですからね。」
効率重視、利益重視のお父様は目に見えて分かりやすい数字が大好きである。祖父母のいうことを大人しく聞いて親の言う通りのエリートコースをなんの疑いもなく歩んできて、学力と家柄とお金がすべてだと思っているお父様に馬鹿ではみ出し者の高校生の気持ちなんてこれっぽちも分からないことだろう。
「ふん。お前がどうするのか見物だよ。言っとくが「結果をださなければ転校。ですよね。分かっていますよお父様。」僕はお父様のいつもの言葉を奪って言った。
何度も言われなくても分かっている。
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