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地味な俺と優雅で年中発情期な御曹司の一夜の過ち②

様々な事業を展開する藤原グループの御曹司として生まれた僕は幼いときからその家柄を背負ってきた。中学までは親の言われた通りの学校に行き、親の言われた通りの成績をとり、親の言われた通りに生徒会長になった。 そんな僕の親の意見に影響されていない唯一の行動がセックスである。セックスをするときだけは僕は親の人形ではないし、自分が望む通りにできる。何より、親の目を盗み、親に言われていないことをすることにとんでもない興奮を覚えた。 そんな僕が初めて親の意見に逆らったのは高校を決めるときだ。 このまま親の操り人形でいるのはまっぴらだと思った僕は親への当てつけで藤ヶ丘高校に行くことに決めた。当然、親は反対した。その選択が将来につながるのかと。僕は自分が藤ヶ丘高校に入って不良高校を変えてみせると言った。自分の学力も全国単位で上位をキープすることも。そうして、成績が少しでも落ちたら、1年たっても高校に変化が見られなかったら転校すること、大学は親の言う通りの大学を受けることを条件に俺は藤ヶ丘高校に行く許可を得た。条件付きではあるものの、親に意見をすることがなかった僕の大きな進歩である。それに、親への反抗で入った藤ヶ丘高校はとても楽しい。今まで幼稚園から中学まで私立の学校に通う親の躾の行き届いた良い子達ばかり見てきた僕にとってはとても新鮮な環境だった。セックスもヤリ放題だったし。何より蓮君達の存在が大きい。 蓮君は入学してからふらふらとセックスばかりしている僕に声をかけた。 「生徒会に入らないか。お前が必要なんだ。」と。 僕が良いとこのお坊ちゃんなことに、先生達の態度とかで気づいたのかもしれないし、藤ヶ丘でぶっちぎりに成績が良い僕に目を付けたのかもしれない。でも多分蓮君は僕が心配だったのだ。 僕は入学当初、1日に何人もの生徒とセックスしたり、一度に大人数を相手にしていたりと無茶苦茶にセックスをしていた。それはそれで興奮していたが。むさ苦しく女の子に縁がない男子校で綺麗で中性的な僕に目をつける生徒は多かった。藤ヶ丘高校の泡姫。生徒会に入るまではそう呼ばれていた。今でも直接呼ぶ子はいないけど、陰でそう呼ぶ子達はいる。藤ヶ丘の生徒にしては上手いあだ名をつけたもんである。そんな僕に同じクラスの蓮君だけは、たびたび苦言を呈していたし、本気で心配してくれた。そして、自分が生徒会長になった際は僕に生徒会に入るように言ってきた。僕は親との約束もあったため、迷わず生徒会に入った。何より蓮君達はこんな馬鹿ばかりの不良高校ではかなりのご馳走だったから。未だ誰一人として食べさせてはくれないが。 蓮くんを初めて見たときは、カリスマ性があるというのはこういう人かと思った。勉強ができるとかできないとか関係なしに、これはもう生まれ持ったものである。彼の迫力とオーラによる近寄りがたい雰囲気は同時に彼が特別であるということを示している。人は自分とあまりにも違う突出した人間に恐れと同時に憧れを抱く。蓮くんは自分の近寄りがたい迫力に反して、自分から人に関わり、人を助ける。見返りなど一切求めずに。ゆえに人がついてくるし、崇拝の対象である。特に、藤ヶ丘にいる馬鹿で単純な生徒達にほどそのカリスマ性は発揮される。藤ヶ丘の生徒達は学力やスポーツの順位や家柄で人を判断しない。理屈じゃなくて本能で、相手が自分より上か下かを判断する。今藤ヶ丘にいるほとんどの生徒が、上級生も含めて、入学してたった半年の蓮君に憧れと尊敬を抱いているのは喧嘩の強さだけでなく、そういうことだ。 新君や悠斗君も蓮君ほどではないにしても人を惹きつける能力がある。そして新君と悠斗君の良さは蓮君と一緒にいてますます発揮されるのだ。あの3人は本当に良い関係を築いている。羨ましいくらいに。そしてそんな3人といるのは何より楽しいのだ。蓮君達は僕のことを家柄でみない。特別扱いもしない。蓮君達の前では僕もごく普通の男子高校生だ。 僕は父との外食を終えて、友達の家に行くと伝えた。父は仕事があるからといって会社に戻った。僕の父は自分の目が届かないところでは基本的には僕に対して放任である。 しかし、この月に一度の食事は僕にとってストレスの塊である。冴えないおじさんと二人きりで、結果を出さなければ転校だぞとプレッシャーをかけられ、進捗を報告すれば文句ばかり言われる中でとる食事は地獄である。 僕はスマホを手に取る。セックスしたい。何も考えずに快楽に溺れたい。適当に連絡がつきそうな子を探していたが一人の名前が目についた。絶対にヤラせてくれないだろうけど、なんとなく駄目元でメッセージを送ってみた。 セックスしたいというメッセージを何人かに送っていると電話がかかってきた。 「もしもし。律樹さんこんにちは。」 「誠君。電話してくれるなんて嬉しいね。セックスさせてくれるの?」 「いいですよ。」 「え。」 電話から聞こえてくる誠君の声にスマホを落としそうになった。 「どこにいけばいいですか。」いつになく積極的である。 誠君の意図は全く読めないが、僕はいつも使うホテルの近くの駅を伝えた。分かりましたと電話を切る誠くんからいつもと変わった様子は感じなかった。むしろ僕のほうが動揺している。誠君は本当に僕とセックスするつもりなんだろうか。以前誠君を襲ったときはどうするべきかこちらの様子を伺っていた。あれから、これは拒否しても良いものだと学んだ誠君は2人きりのときに、俺がそういう雰囲気に持っていこうとしてもさりげなくかわすようになった。誠君のスルースキルはなかなかのものであるため、僕も誠君とあの日の続きをすることは諦めていた。 僕は何となく落ち着かない気持ちで駅に向かった。

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