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地味な俺と優雅で年中発情期な御曹司の一夜の過ち③
「随分お洒落してますね。」スーツを着た僕の恰好をみて駅で先に待っていた誠君が言う。
誠君はトレーナーに細身のパンツとラフな格好をしている。
「お父様と外食してね。その帰り。」
僕の恰好はどうでもよい。僕は誠君の手を取って言う。
「本当にいいの?」
「そのつもりできたんですよね?」誠君が不思議そうに聞き返す。
そのつもりはそのつもりだが、誠君はどういうつもりなんだろうか。こちらとしては願ったりかなったりの展開であるけど、スムーズに行き過ぎて怖いくらいだ。蓮君の顔が浮かんだ。僕が絶対に敵わない蓮君。そんな蓮君が欲しくてたまらない誠君を僕が黙って手に入れる。僕はなかなか性格が悪いらしい。蓮君への申し訳なさと同じくらい勝ち誇ったような気持ちが頭の中をぐるぐるしている。
「「・・・・・・。」」
僕達は終始無言でホテルまで歩いた。誠君はいつもと全然変わらない様子であるが、僕はなんだか落ち着かない。セックスだけは僕が思い通りになるものだったのに。今日は全然思い通りにいっているようでいってない。でもなんかもう、どうでもいい気もする。いろいろなことを考えるには僕は疲れすぎている。
ホテルの部屋に入った途端、僕は無言で誠君をベットまで引っ張っていき強引に押し倒した。
着ていたトレーナーをたくしあげると白くて華奢な身体が露わになる。随分乱暴に扱ったが、誠くんは抵抗する様子がまるでない。されるがままで、ただこちらを瞬きしながら見ている。照れる様子も緊張している様子も怯えている様子もない。それは最初に僕が誠君を押し倒したときと全く同じ反応だった。でもその得体の知れない反応を楽しんでいる余裕は今の僕にはない。
「もう一回聞くけど。」僕は誠君のズボンに手をかけて同じことを聞く。
「本当にいいの?」
「それは僕のセリフです。本当にセックスしたいんですか?」誠君は相変わらず平然として言った。
誠君のその言葉に僕はすぐに頷けなかった。
「何でそんなこと聞くの。セックスしたいから連絡したんだけど。」
「それで僕に連絡したんですか?性欲満たしたいだけならもっと確実にできる人に連絡しません?」
「他の人にも連絡したけど。誠君から電話があったから。」
でも僕はどうしてあの時誠君に連絡したのだろうか。誠君とセックスしたいとは思っていたけど、多分無理だと分かっていたはずなのに。
「だって律樹さん、わざわざ言わなくてもいつでも発情期じゃないですか。本当にやりたいときは何も言わずに勝手にヤッているし。それがわざわざ連絡してきて2回も僕に確認とって。なんかすごく追い込まれているようですし。それに、なんでちょっと泣きそうなんですか。」
「え・・・・。僕、泣いてないけど・・・・。」
随分な言われようだし、僕は全く泣いてない。しかし、僕はどんな顔をしているのだろうか。
僕に押し倒されている誠くんが手を伸ばして僕を抱き寄せる。今日の誠君は随分積極的である。
誠君は一言も喋らないまま僕の頭をなでている。なんだかよく分からないけど泣きそうと言われてそんな風に慰められるとなんだか悲しくなってきた気がする。
「・・・・疲れた。」
疲れた本当に。
父との食事も父の言う通りにすることも父に逆らうことも勉強も文化祭の準備もセックスもなにもかも。最後の二つは自分が好きでやっていることなのに変だ。
僕は嗚咽をおさえきれなくなってきた。
結局親の言う通りにしか生きられない自分も、セックスにしか逃げられない自分も、文化祭が失敗することを考えてしまう自分も、蓮君にどう頑張っても敵わない自分も、転校して蓮君達と離れるのが嫌になっている自分も、そんな蓮君の好きな人を奪おうとした自分も、そして今、その奪おうとした相手に慰められている自分も全部嫌だ。何もかも嫌になってきた。
誠君は黙って俺を慰める。
「誠君の馬鹿。」
誠君の馬鹿。
いつのまにか現れて、無害で地味なように見せかけて、みんなの憧れ蓮君の心をあっというまに奪ったかと思ったら、いつの間にかみんなに馴染んで、僕をベッドの上で泣かせてる。誠君は友達がいないと言っていた。そんなの僕にだっていなかった。蓮君達が初めての友達らしい友達だった。そんな蓮君達の前でも泣いたことはなかった。というか、物心をついてから人前でこんなふうに泣いたことなんてない。
どれくらい時間がたっただろうか。泣き疲れた僕が誠君をみると彼はスヤスヤと寝息をたてていた。
「信じられない・・・。」よくあの状況で眠れたものである。
でも眠ると本当に幼い子供のような誠君の寝顔をみてるとなんだか面白くなってきた。僕が声をあげて笑っていると誠君がその声で起きる。
「俺、寝てました?」
「寝てた。」
「律樹さんも寝ましょうか。」誠君が優しく声をかける。
僕は誠君を抱き枕のようにする。
「おやすみなさい。」僕は目を閉じた。誠君はそのまま大人しく僕に抱き枕にされていた。
今日は久しぶりに泣いて疲れたからもう寝よう。誠君も寝てるし。
いろいろと考えるのはまた明日でいいや。
誠君を抱き枕にして眠った夜は驚くほど良く眠れた。
目が覚めると朝勃ちしていた。
僕は可愛い顔で寝息を立てている誠君をオカズに自身のペニスを慰めた。誠君がいつ目を覚ますか分からないこの状況で自身を慰めることは正直とても興奮した。蓮君も自慰行為なら許してくれるだろう。多分。しかし、いつも通りに性欲がある自分にほっとする。
「次にベッドで一緒になったら、誠君も慰めるからね。」
僕は寝ている誠君の耳元で囁いた。
次にベッドで一緒になるときは蓮君も一緒だ。3Pしよう。それが一番平和的だし興奮する。今度は僕が誠君を泣かせる番である。
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