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地味な俺と甘いマスクで面白さを求めるチャラ男の限定お付き合い②
そして今、その彼女から連絡が来た。
俺はすぐさまブロックしようとしたが、文化祭があるんだってねという彼女のメッセージで思いとどまった。このまま下手なことをすれば何をするか分からない。しかし、何より俺は彼女のことが大嫌いなのである。自分勝手で狡猾で手段を選ばない彼女のことが。できればなるべく関わりたくない。本当に。しかし、文化祭の準備が佳境を迎えている中、蓮達に相談するのも気が引ける。なるべく一人で片づけてしまおう。
『今度会えない?』彼女からのメッセージに拒否権はない。
俺は溜息をついて、作戦を練った。
連絡が来てから一週間の今日、俺は文化祭準備に追い込まれている蓮達にちょっと予定があるからといって生徒会室を後にした。できるだけ人目があるところにしたかったため、場所は俺からファミレスを指定した。また目の前で手首を切られては敵わない。彼女は特にそれに文句をつけてくることはなかった。俺は彼女に指定された時間より早くファミレスに着き彼女を待っていた。
「お待たせ。」
そう言って笑顔で席に座った彼女はもともと細かったがさらに痩せていた。顔がちょっと変わっている。多分整形したんだろう。
「俺はお前とはヨリを戻す気はない。今日はそれを言いにきた。」
俺は彼女が席につくなり、冷たく彼女に言い放った。彼女はラインでまだ俺のことが好きだと言っていた。でも、俺は最初からお前のことなんか好きじゃない。俺は彼女の前では彼女のことをヒカリと呼んでいた。でも、お前の名前を呼ぶつもりはもうない。
「どうして。私はこんなに悠斗のことが好きなのに。私、悠斗のために頑張ったのに。悠斗のためにダイエットしたし、悠斗のために私、整形までしたのに。全部悠斗のためなんだよ。なのに、どうしてそんなこと言えるの。」彼女は必死に言う。
全然変わっていない。彼女はいつも『悠斗のため』か『悠斗のせい』しか言わない。
「悠斗のせいで私はこんなに傷ついたのに。まだ傷消えてないんだよ。もう2年もたつのに。」
彼女が自分の手首の傷を見せる。
俺はその傷を目にしたくなくて俯いた。
「悠斗さん。」
聞いたことがある声がした。
「え?」
俺は思わず顔をあげる。まこちゃんだ。それに、何故か女装している。日向学園の制服を着て長い黒髪のまこちゃんはどこからどうみても女の子である。なんでまこちゃんがここに?しかもなんで女装?
俺が戸惑っているとまこちゃんが俺の隣に座ってきた。
「まこちゃん。俺今取り込み中なんだけど・・・・。」
男も女も俺の交友関係を良しとしなかったこの目の前の女に、女装して女の子にしかみえない今のまこちゃんはかなり危険だ。
まこちゃんはそんな俺には目をくれず、目の前の彼女に向かって火に油をそそぐようなことを言ってのけた。
「ちょっとあなた。さっきから聞いてりゃ悠斗さんとどういう関係?」
「あんたこそいきなりきて何なのよ。」
思ったとおり彼女はまこちゃんに敵意を向ける。
「彼女。」
「は?」
俺は思わずまこちゃんを見た。
「今の、悠斗さんの彼女。」
まこちゃんが彼女の敵意のある視線を受け止めて、繰り返して言う。いつからまこちゃんが俺の彼女になったんだ。
「というわけで俺にも聞く権利があります。」
さっきからまこちゃんはキャラがブレブレである。俺って言っちゃってるし。
「・・・・・・ぷっ。」
「あっはは。何それ。まって。」
俺はそんなまこちゃんをみて大声で笑ってしまった。
突然笑い出した俺をみて彼女と、まこちゃんさえも怪訝な顔で俺をみる。
ひとしきり笑った俺は、まこちゃんの肩を抱いて言う。
「そう。まこちゃん。俺の今の彼女。」
俺は彼女を挑発するように見た。
何故まこちゃんが来たのかはよく分からないけど、なんだか面白い展開だ。厄介なこの女は大嫌いだが、面白いことは大好きだ。
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