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地味な俺と不良高校最強の男①
俺が佐々木さんと別れ、藤ヶ丘高校に向かっている途中にいかにもヤンキーですという藤ヶ丘高校の生徒に声をかけられた。
「君可愛いね。俺たちとお茶しない?」
デジャブである。
「いえ、急いでいて。」しかし、そう答えた瞬間俺は意識を失った。
目を覚ますと知らないところにいた。倉庫のようなところである。俺の両手は後ろで縛られており自由がきかない。藤ヶ丘高校の制服を着た男達は数えて5人。
「お姫様のお目覚めだ。」スキンヘッドの男がニヤニヤして言った。
気づかれたか。足の自由はきくためこっそり逃げれるかと思ったが無理そうである。逃げられないと分かっていて足まで縛ってないんだろうけど。
「ここはどこでしょうか?」
あまり騒がしくないため、文化祭の最中である藤ヶ丘高校ではなさそうである。かといって、俺一人を運ぶのに未成年の高校生が車なんかは使えないからそう遠くはなさそうであるが。
「教えねぇよ。でも、もうすぐお迎えがくるから大人しくしてな。」
「誰が迎えにくるんでしょうか?」
俺の藤ヶ丘の知り合いというと蓮さん達しかいない。
「桐生蓮。お前、あいつの彼女なんだろ?」
なんのことだ。いつから俺が蓮さんの彼女に?俺が目をぱちぱちさせていると不安になったのかスキンヘッドの男が言う。
「お前、この間生徒会室に行ってたじゃねぇか。制服が違うから一瞬焦ったが、まさか変装でもしてきたつもりか?」
そういえば悠斗さんの一件があったとき、俺は初めて女装したまま生徒会に行った。
それをみていた藤ヶ丘の生徒が勝手に彼女と勘違いしたということか。そういえば彼女を生徒会室に連れ込む生徒会長もいると言っていたもんな。たまたま俺があのとき着ていた日向高校の制服じゃなくて、セーラー服を着ているのが相手を少し混乱させているらしい。しかし、大前提が間違っている。彼女ではない。というか男だ。
「どうして蓮さんを呼びだすんですか?」
こいつらは蓮さんに恨みがあるような奴なのだろうか。でも1対1でも、1対5でも敵わないから俺を人質にとって喧嘩を売るつもりなのか。なんとも情けないことである。
「桐生を呼び出したら、文化祭の目玉企画なんかできないだろ。」
生徒会主催のストリップを中止にしたいのか。
「今、何時ですか?」
「14時。」
ストリップの開始時刻が15時だった。ここがどこかは分からないけど、あと1時間で蓮さんがここに来てたら到底間に合わないような気がする。準備とかもあるだろうし。迂闊だった。俺のせいで、蓮さん達が頑張って準備してきた文化祭を台無しにするわけにはいかない。
「蓮さんにはもう連絡してあるんですか?」
「そうだ。お前の携帯でな。俺が話すとかなり焦っていたよ。傑作だったな。」
男たちがゲラゲラ笑う。またもや不覚。携帯も盗られていたのか。蓮さんはここに来るだろう。でも、そしたら時間がない。
「取引しません?」
考えろ。どうするべきか。
「取引?」
「今すぐ俺の携帯を返して欲しくて。」
蓮さんに連絡して、自力で抜け出したとでも言おうか。それか、文化祭が終わるまでこいつらに猶予をもらうか?
「んなことできるわけないだろ。」
そりゃそうであるが、取引って言ってんだからこっちが何を出すかも聞いてくれ。
「お金ならいくらでも出しますよ。」
嘘ではあるが。こんな奴らに金なんか渡しだしたら永遠とエスカレートする。いや言ってから後悔した。俺の財布も盗られてるんじゃ?俺もかなり動揺しているようである。
「こんなシケた財布を持ってる奴に金とかいわれてもな。」
案の定財布も盗られていた。
「家から持ってきます。」
「家なんかに今返すわけないだろ。」
くそっ。なかなか藤ヶ丘にしては賢いじゃないか。
「あなたも藤ヶ丘の生徒なんですよね?文化祭参加しなくて良いんですか?みんなで準備してきたんですよね?」
良心に訴えてみる。
「生憎、俺は桐生達生徒会には恨みがあってな。あいつらが率先して先導している文化祭なんか参加するかよ。」
地雷だったかもしれない。
「もしかして、以前の生徒会長ですか?」
薄々思っていたが、生徒会に並々ならぬ恨みがあるようだし、入学して喧嘩を売ったと思ったら返り討ちにされた元生徒会長ではないだろうか。それならなんとなく納得は行く。1対5でも敵わないと蓮さんを恐れているのも。
「そうだ。」
なんかコイツ、聞いたことにはなんでも大体答えてくれるな。
「あいつに負けてから俺の高校生活は地獄だった。周りからは自分から喧嘩を売っておいて入学したばかりの半分中坊みたいな1年生に瞬殺されたことを馬鹿にされるし、あいつらが生徒会に入ってから授業態度も真面目になるし、周りはあいつらを尊敬するやつばかりになるし、しまいにはこんな行事まで真面目にやりだす。」
それはとても良いことじゃないのか。普通の高校生とはそういうものだ。
「俺が生徒会長だったときは、俺のいうことなんかろくに聞きもしなかった奴らが桐生達の言うことは素直に聞いてんだぞ。俺に憧れる奴なんかいなかったのに。」
そういえば支持率が段違いに上がったと言っていたような気がする。まあなんとなくその理由は分かるが。
この人達と蓮さん達じゃ器のでかさも、迫力も、頭の良さも、見ための良さも段違いである。
「いつまで喋ってんですか。」
傷んだ金髪の男がスキンヘッドの男の話を遮る。まあ、こういうとこも。なんかなぁ。尊敬されてないんだなと感じる。
「桐生が来るまでこいつヤっちゃっていいっすか?」
傷んだ金髪の男はスキンヘッドの男の返事を聞かずに俺を押し倒した。ちょっと待て。俺は男だ。
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