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地味な俺と不良高校のストリップと告白の返事①

倉庫の前にはタクシーが停まっていた。タクシーできたのか。流石である。多分律樹さんのポケットマネーだろう。俺たちはタクシーで校門まで向かった。現在15時20分。 「蓮!」 新さんが校門で待ち構えていた。 「間に合ったか?」 「ステージは遅らせてもらってるが、そろそろ限界だ。早く準備するぞ。」 「誠。」 蓮さんが俺を不安そうに見る。俺を一人で残すことに抵抗があるみたいだ。流石にこんな人目があるところで何か仕掛けてくる人達はいないだろう。何より、藤ヶ丘の生徒は蓮さん達の味方のほうが多いのだから。 「蓮さん、俺、ステージ観てますから。いってらっしゃい。」 俺は蓮さんの背中を押した。 「ああ。」蓮さんが新さんと一緒に走りだした。 「チビ、楽しみにしてろよ!」 新さんは蓮さんと一緒に走りながらも叫んだ。 「うん!」 俺も声を張り上げた。俺も早くステージのほうへ行かなくては。 ステージのある場所はすぐに分かった。 そこだけ明らかに人の数が違うし、何より他校の女子達の数がすごい。こんなに人を集めたのか。いつもはヤンキーだらけの藤ヶ丘高校が今日はとても華やかである。そんな女子達の華やかさにあてられて、藤ヶ丘のヤンキー達もいつもよりかなりマイルドになっており、女の子達が優先的に前で観られるようにとても親切にしている。これが悲しき男子高校生の性であろうか。そのため、ステージの前のほうには女の子が、後ろのほうには男子達が固まっている。俺は始まる時間ギリギリのこともあって後ろのほうにいたのだが、女装している俺を女の子と見たのか、藤ヶ丘の男子生徒が見やすい前のほうの場所に連れていってくれた。ちなみに連絡先をきかれたが、丁重にお断りする。 そこに律樹さんの声がする。 「大変お待たせしました。今からみなさんお待ちかね、生徒会主催のストリップが始まります。みなさんの黄色い声援と茶色い声援で盛り上げてくださいね。」 律樹さんの声に目の前の女子達が高い声ではーいと声をあげる。後ろの男子達もうぉーと言う声で盛り上がっている。 「それでは、It’s a show time!」 律樹さんが綺麗な発音で声をあげた。 ハードなロックの曲がかかり学ランを着た藤ヶ丘達の生徒がでてきた。一糸乱れぬダンスで踊りながら次々と服を脱いでいく様は圧巻である。しかもみんな引き締まった身体をしている。不良高校ともあって髪色がとてもカラフルなのだが、ステージ上ではそれがとても華やかだった。女子達はそんな彼らをみてキャーキャー言っている。曲が終わるとともに、パンツ1枚となったステージ上の生徒達は女子達の黄色い声援を受け、手をふったり筋肉を魅せつけたりと実にサービス精神旺盛である。それで会場は更に盛り上がる。 そして、彼らがステージを去ると今度は和風ロックテイストの曲がかかる。 そこででてきたのは艶やかな着物に身を包んだ律樹さんである。律樹さんは番傘をさし、優雅な足取りでステージの前まで進みでる 。会場の観客たちはその律樹さんの優雅な仕草と綺麗さとなにより高校生とは思えない色気に圧倒される。そして律樹さんはしばらく番傘を使いパフォーマンスをしたあと傘をくるくると投げ捨てる。律樹さんが妖艶な笑みを会場に向けると会場から悲鳴が上がる。そして、後ろを振り向き自分の着物を乱していく。観客はその綺麗なうなじが露わになってキャーといい腰の細さにキャーといい、綺麗なスラリとしたおみ足にキャーと言う。そして、律樹さんが着物を全部脱ぎ捨てるとさらに大きな悲鳴が上がった。 ふんどしである。 とんでもなく美人な男のふんどし姿は会場には刺激が強すぎたようである。 俺の横の女の子なんかさっきから手を口の前にあてて声にならない悲鳴を上げて泣いてんだか笑ってんだかよく分からない状況である。こうして会場中を虜にした律樹さんはありがとうございましたと言って優雅にステージを後にした。爆発的な拍手が起こる。 これは次の人やりずらそうだと思いつつ拍手をしているとダークな感じの洋楽が流れだした。 そして登場したのはタキシードとマントに身をつつみ、シルクハットをかぶった悠斗さんだ。 イメージとしてはドラキュラだろうか。八重歯がちらりと見える。悠斗さんがシルクハットを脱ぎ捨てると悠斗さんは甘いマスクて会場にとろけるような笑顔を見せた。会場から悲鳴が上がる。悠斗さんがこちらを挑発的な目でみながら、白い手袋を口に咥えて外したときの歓声もすごかった。悠斗さんは自分の衣服をセクシーな仕草で脱ぎ捨てていく。スタイルの良い均整のとれた身体を露わにしながらも、会場へのサービス精神を忘れない。目が合った子にウインクしたり、自分の着ていた服を投げたり、サービス精神旺盛な律樹さんにさっきから会場の悲鳴がとまらない。 そして律樹さんがズボンを脱ぎ捨てると黒いボクサーパンツが露わになる。 その甘いマスクのイケメンのあまりのセクシーな姿に会場から悲鳴と歓声があがる。そして最後に悠斗さんは投げチューをしてありがとねとウインクをして笑顔で去っていった。 俺の横の女の子は「あぁ、何?尊い・・。無理・・・。あぁ。もう。」とキレてんだか喜んでんだかよく分からない様でぶつぶつ言っている。 次にキレの良いHIPHOPの曲がかかる。 パーカーとダボっとしているズボンといういかにも踊りますという恰好で新さんがでてきた。 先ほどの派手な二人の恰好とはうってかわってどちらかというとシンプルだったが(それでも目を引くかっこよさではあるが)、そこからの新さんは凄かった。単純に踊りがめちゃくちゃ上手いのである。キレッキレのダンスを披露していく新さんに自然と手拍子と歓声が起こる。会場の盛り上がりは最高潮だ。新さんはノリノリである。新さんが観客に向かって舌を出し、舌のピアスを魅せつけたと思ったら、パーカーを脱ぎ捨てた。黒のタンクトップにつつまれた鍛えられた肉体が露わになる。タンクトップの丈は短めで、バキバキの腹筋とへそについたピアスが見える。そこで大きな歓声が上がる。新さんはそこからもリズムを崩さず、タンクトップを脱ぎ捨てズボンを脱ぎ捨てた。 新さんは派手な柄のトランクス1枚になったかと思うとこちらをニヤリとみて、トランクスに手をかけた。 今日1番の悲鳴があがる。 新さんがトランクスを脱ぐとシンプルなボクサーパンツ1枚になった。 会場では落胆なのか喜んでいるのかよく分からない悲鳴のような歓声のような声があがる。そして新さんはしてやったぞという顔で満足気にありがとうございましたと言って会場を後にした。 隣の女の子は「うぅ・・・。尊い・・・。しんどい・・・。無理。」と泣きながらぶつぶつ言っている。彼女の情緒は限界らしい。

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