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地味な俺とBLにおける死活問題
「ねえ、藤ヶ丘学園の文化祭の動画みた?あのストリップマジでやばかったんだけど。」
「私、生でみたから勝ち組。死ぬほど尊かった。最高。歓声とかまじでやばかったもん。」
「最後のさぁ、あのセーラー服の女装した美少年が自分より体格の良いハーネス付けたイケメンを押し倒してチューしたの、本当に最高だった。生であんな尊いBLみれるとは。私生きててよかった。」
「あのセーラー服の女装少年バリバリの攻めだったね。小柄で女装なのに攻めのギャップが最高。」
「えっ。待って。普通女装少年が受けじゃん。あの体格差だよ。小さいほうが受けに決まってんじゃん。最後お姫様抱っこされてたし。誘い受けよ。絶対。」
「何言ってんのよ。軍服からのハーネスつけてたのよ。受けに決まってるでしょ。雄っぱいでかいほうが受けって決まってんじゃん。」
教室では、何やら後ろの席の女子達が熱い議論を繰り広げている。
自分のことだと分かると何となしに聞いてしまうものである。セーラー服の女装少年は俺のことだろう。彼女たちの頭の中では大変美化されているようであるが。藤ヶ丘の文化祭は歴史に残る異常な盛り上がりっぷりをみせて終了した。
話題のストリップは律樹さんが動画にまとめてアップして、再生数を稼いでいるらしい。世間での藤ヶ丘のイメージは不良高校というより、面白くて、イケメンの多い高校と認識され始めている。イケメンの多さに関してはあの生徒会が特殊なだけである。しかし、文化祭に乗じて彼女や好きな女子ができた藤ヶ丘の生徒達が彼女の好みに合わせてイメチェンしたり、勉学に励んだりと品行方正とはいわないまでも多少真面目になっていると律樹さんが上機嫌で話していた。
この分だと律樹さんの転校もしばらくない様子だ。波乱万丈の文化祭であったが、一件落着である。
「攻めと受けとはそんなに重要なものなんでしょうか。」
俺は後ろの席の彼女たちの盛り上がりっぷりが気になり、前の席でメイクを直している佐々木さんに聞く。
「腐女子にとっては死活問題よ。下手に議論に参加しないほうが良いわよ。」佐々木さんが真面目なトーンで答える。
俺は蓮さんとの出会いを思い出したことで、佐々木さんのことも思い出していた。
あのとき佐々木さんにあげた姉さんの日向学園の制服を、高校生になって俺が着て、その姿で蓮さんに再会するとはまたしても妙な縁である。
出会った当時、俺は佐々木さんより小さかったが、身長差はさらに広がったようだ。俺の成長期は一向に来る様子がない。佐々木さんにはなんとなく出会ったことを思い出したとは言っていない。俺はもう、その出会いを忘れないから、多分それで良いのだ。
後ろではさらに熱い議論が繰り広げられている。受けにおけるおっぱいの大きさの重要性とか、女装のスカートのセックスでの役割とか女装時のパンツをどうするかなどなど。受けと攻めの論争からどんどん論点がずれてきている。しかし、教室で話すにはなかなか過激な内容である。
「俺は結局攻めと受けどっちだと思います?」
「それはアンタたちの問題よ。二人で相談して決めなさい。」佐々木さんが溜息をついた。
俺は放課後、母さんのお手製のカップケーキを持って、藤ヶ丘高校の倉庫に行った。今日は4人ともそろっていて、各々好きなように過ごしている。俺は蓮さんの隣に座って聞いてみた。
「蓮さんは攻めと受けどっちが良いですか?」
「・・・・・・。」蓮さんは顔を真っ赤にして黙りこんだ。この反応、蓮さんはおそらく攻めと受けがなんたるかを知っているらしい。意外だ。
そんな俺達を見て、悠斗さんは爆笑してるし、新さんは呆れているし、律樹さんは目を輝かせている。いつも通りの生徒会である。
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