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地味な俺と不良高校の生徒会と情事の後①
蓮さんとセックスして二週間。あれから俺は蓮さんに会っていない。
だって、あんなことをした後に、どういう顔で会えばいいっていうんだ。
今でも蓮さんの手とか体温とか身体とかを思い出して顔から火が出そうである。なんであのときあんなに平気だったんだろうか。
無理。思い出すのも無理。なんであんなエロいことできたの俺。童貞には刺激が強すぎた。
テスト期間だからということを理由に俺は蓮さんの誘いをのらりくらりと断っていた。
蓮さんや悠斗さんや律樹さんや新さんまでもが、テストが終わったら藤ヶ丘の生徒会に顔をだせと連絡がくるけど無理。まだ、蓮さんに会う心の準備ができない。
今日でテストも終わり、家に帰る準備をしていると、教室の女子達のキャーという声が聞こえる。
何だろ。声のほうをみると、女子達が窓から身を乗り出すようにして手を振っている。
「ねえ、佐藤。吉岡達来てるけど。」
佐々木さんが俺に声をかける。
えっ?なんで?
俺は窓の外に目をやる。
そこにはかなり不機嫌な蓮さんとそんな蓮さんから距離をとっているいつも通りに不機嫌な新さんと、女子生徒ににこやかに手を振る悠斗さんと、道行く生徒達をニコニコしながら物色している律樹さんがいる。
俺、蓮さん達に今日はまだテスト期間だからって嘘ついたのに、なんでいるんだろう。
っていうか、このテストが終わったタイミングで来たってことは俺が嘘ついてたことバレてる?
「ちなみに、アンタがなんで嘘ついて、桐生のこと避けてたのかは知らないけど、今日でテスト最終日って吉岡に言っておいたから。」
佐々木さんが俺の肩をたたいて言う。
「佐々木さん!」
俺は佐々木さんに対して声を荒げる。なんで言っちゃったんだ。
「桐生結構、怒ってるみたいだから、早く仲直りしなさいよ。」
「無理。無理。佐々木さん、一緒に来てください。」
俺は佐々木さんに泣きつく。
「ユカ!テストの打ち上げ早く行こうよー。」
しかし、クラスの女子が佐々木さんの腕を引っ張って言う。
「じゃあ、アタシ用事あるから。お疲れー。」
そう言って佐々木さんは帰っていった。リア充め。
俺は窓の外をもう一度見る。まだ、蓮さん達はいる。
俺は覚悟を決めて教室を出た。
裏門から帰ろうとしたところ、悠斗さんと新さんに捕まった。窓から見たときは、4人とも校門にいたのにいつの間に。
「まこちゃん見っけ。」
悠斗さんが俺の腕を掴む。
「悠斗さん。新さんも。なんで。」
「蓮、めちゃくちゃ怒ってんだから、お前さっさとなんとかしろ。何したんだよ全く。」
新さんが呆れ半分、怒り半分と言った様子で俺に声をかける。
「無理。無理です。離してください。蓮さんには会えません。」
「もう、蓮には連絡しちゃった。こっちに来るって。」
悠斗さんは俺をほとんど抱きかかえるようにして抑え込む。
「悠斗さん、一生のお願いです。」
俺はそんな悠斗さんに向かって言う。
「俺は、いや、俺達は結局、蓮の味方だからなぁ。いくらまこちゃんの頼みと言ってもねぇ。」
「悠斗さん。そう言いながら笑わないでください。楽しんでますよね。この状況。」
「だって、こんなに動揺しているまこちゃん見るの初めてだもん。今まで何しても割と動じなかったまこちゃんがこんなに焦ってるとこみるの面白いなと思って。」
悠斗さんにお願いしても駄目だ。完全に面白がっている。
「新さん!」
俺は新さんに助けを求める。
「蓮が超、怒ってるのに、お前の味方するわけねぇだろ。どうせお前が悪いんだからさっさと謝っとけ。」
蓮さん大好きな新さんに助けを求めても無駄だったか。
「誠。」
蓮さんの声がする。その声にはめちゃくちゃ怒りが滲んでいる。
無理。顔見れない。
俺は、俺が逃げ出さないように押さえつけていた悠斗さんの後ろにしがみついて隠れる。
「ちょっと、まこちゃん。誤解を招くようなことやめて。蓮、違うから。とばっちりだから。」
さっきまで面白がっていた悠斗さんが蓮さんに必死に弁明する。
「誠。こっち向け。」
蓮さんが俺に声をかける。やばい。
蓮さんの声を聞くだけで、あの日のことを思い出してしまう。耳が、顔が熱くなる。
蓮さんの声を聞いて硬直してしまった俺を悠斗さんが素早く蓮さんに差し出す。
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