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第16話 沿う
ほとんど下生えもなく、つまり男子を通りこして幼女のような見た目の下腹部に涙が出そう。準備と称して何回も見られてるはずだけど、明るい陽光にさらされてケタ違いの恥ずかしさで頭が沸き立ってしまう。膝を閉じたいのに大きな手でがっちりと押さえられて、もがいても腰が揺れるだけになっちゃって。
「僕のは醜いですから……」
「いいや! 可愛いよ!」
即座に否定し、傷痕をするりとなで上げられる。
「ひゃぁ!」
変な声が出て慌てて口を塞ぐけど、じんじんするのが止まらなくて喉奥から声が漏れる。僕のそこは傷痕だからか、とても敏感なのだ。しかも本来あるものがないせいで、力が入りにくくてちょっとゆるい。
「ややや、やめて下さい! 漏れそう! 汚いです、手が汚れますから!」
「綺麗だよ、とっても!」
なんて、さらになで回すからさっそく何かが漏れてる!
「あああ! 申し訳ありません!」
あまりの羞恥にどうにか我慢していた涙がこぼれてしまう。一度こぼれたらもう止まらない。とにかく陛下の手を清めなくてはと暴れていると、後ろからそっと抱き込まれる。
「汚くないよ。大丈夫、しょーちゃんの男の部分が残ってたんだよ。良かったね!」
――良くないーーーーー!!!
と叫びたいところだったけど更なる刺激に声を飲み込む。
傷痕の更に奥をそっと指で押され、ギュッと身体をすくめてしまう。
「ずっと待ってたんだ。しょーちゃんが大人になったら、ここでつながりたいってずっと思ってた」
耳をなぶる声に陛下の指を締め付けてしまう。すがりつくものが欲しくてもがいたら、体を反転し抱えられてちょっと安心する。
さんざん準備と称して触られてきたからか、ぬめりを纏わせた陛下の指を、未熟なはずの僕の後ろは案外すんなりと飲み込んでしまう。違和感と一緒に広がる不穏な感覚。指が増えれば不穏な刺激も膨れ上がってきて腰が跳ねてしまう。
「ん、ぅっ。んんん……ふ、ふぁ、んっ」
体を跳ねさせる刺激をどうにか逃そうと息を継ぐけど、変な声が出る。声をこらえようと陛下の首にすがりついて腕に力を込めれば、陛下の舌が耳穴をなぞる。
「ああっ、んっ」
「可愛い。キュってなった。声出した方が楽になるよ。ほら」
「やああああぁっ」
体の中を強くなぞられてのけぞってしまう。顎から口端、まなじりまで舐め上げられて、涙と涎と鼻水までもが流れていることに気付いたけど、顔を逸らすことしかできない。
敷布を掻きつかんで力を入れても、後孔からの強すぎる刺激に腿が開いてしまう。その隙に震える内股を押さえて陛下が腰を割り入れてくる。いきり立ち凶悪なほど大きく育ったご自身に、さらにぬめりを足すのが見える。僕の不安を読み取られた陛下が、僕の後ろにもたっぷりと同じものをまとわせ艶然と微笑む。
「はぁ……しょーちゃん、本当に可愛いよ。ようやくだ。なるべく傷つけないように頑張るからね」
悩ましげなため息を漏らすと僕の腰をさらに寄せる。
熱い、指ではないもっと大きなもの。それが僕のお尻の狭間でぬるぬると行き来してからピタリと止まる。
「しょーちゃん、体ガチガチ! ははは、一回力抜いて。そうそう。それから、お腹だけ息んでみて」
二の腕をさすられて、唇を舐められればちょっと緊張がゆるむ。なんで息むんだろ? と力をこめた瞬間、熱い大きなものが割入ってくる。
「ああああ――!」
あまりの質量に頭の中にメリメリと音が響くよう。
――いたい、痛い、痛い!
「グッ、しょーちゃん! 息吐いて、吐いて!」
同時に胸の頂をつままれて目を開ければ、辛そうな陛下の顔が滲んで見える。
「んっ、ふー、ふっ、ふぅ、ぅぅぅ……」
「うん、そうそう上手。力抜いて……」
「んっ、んんんっ、うぅ……ううううーっ」
行ったり戻ったり、ずいぶん長い時間をかけて陛下と僕の体がぴったりと合わさった頃には、二人とも汗やら涙やら僕が垂れ流したいろんなものでびっしょり濡れて、僕はもうすっかり力が入らなくなっていた。
「ありがとう、しょーちゃん! 大丈夫か?」
汗を浮かべて上気した陛下が鼻先をすりあわせて、労りの声を掛けて下さる。
大丈夫です、と答えたいところなんだけど、ちょっとでも力を入れたらあらぬところが壊れてしまいそう。ちょっと口端をあげて、笑顔を作るのが精いっぱいだった。
陛下とつながって、顔中に口づけて下さったり、頬や顔をなでて下さったり、されるがままにしばらくじっとしていた。そうしていると、陛下の筋肉質な体と僕の痩せぎすな体、こんなにごつごつ、コツコツしているように思うのに不思議と体同士がぴったりと沿う。人ってこうやって抱き合うようにできてるんだなって思った瞬間、心臓がきゅっと引き絞られた。なんだか愛しさがどうしようもなくあふれて、体重をかけすぎないようにして下さっている陛下の体に手を回し、そっと抱きしめた。すぐに抱き反されれば心の中まで温かさが染みこんでくる心地がして、僕は幸せに満たされた。
僕の体が貧相なせいか、陛下はそれ以上ご無理をなさらなかった。
陛下手ずから僕の体を清めて新しい夜衣を着せて下さったように思うけど、吸い込まれるように眠りの淵に落ちてしまっておぼろげにしか覚えていない。
あんなに何日も準備して、たぶん、いや絶対に陛下は物足りなかったと思うくらいしかできなかったのに、次の日僕は体中みしみしと筋肉痛になった上に、腰から下は感覚がなかった。陛下はゆっくりでいいよって言って下さったけど、早く陛下も満足して頂けるように頑張りたいと思う。
明るいうちから寝てしまったので空腹で目が覚めた。陛下が水を飲ませたり、着替えをさせたりかいがいしくお世話して下さる。恐れ多くて、自分でできますと言っても頑として譲って下さらない。実際立とうとしたら腰が痺れてお尻は刺すように痛かったので、おとなしくされるがままにしていた。
初めて見る宦官服ではない上質な衣を僕に着せつける陛下は、見たことないくらい上機嫌だ。
「うん、よく似合う! 桔梗色にして大正解! 宴に着せようと思って誂えといたんだ。お、しょーちゃんのお腹がかわいい大合唱してる。あんまりぐっすり寝てるから起こすのも可哀想でね。お腹空いただろ」
腹の音を合図に陛下に抱き上げられて閨の戸から出れば、そこにはこぢんまりと宴の準備がしてある。
「おめでとう、しょーちゃん!」
「おめでとうございます、お兄さま!」
「!!!」
ビクリと肩が揺れ、首を巡らせれば、長椅子のリァンさまと目が合う。
「昨日お誕生日だったでしょ? 大人になったお祝いよ。ふふふ……ほんとは昨日準備してたんだけどね!」
突然宴が延期になったんだもん、すべてお見通しよってことだよね。意味ありげな微笑みを浮かべておられるから、お祝いって誕生日だけじゃないよね。
リァンさまに寄り添うメイの微笑みは、心からお祝いしてくれてるって無垢さがかえっていたたまれない。
あまりの恥ずかしさに首から上が茹だりそうで、また涙がにじんできた。
何の罰ですか? これ。
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