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第3話
「今までそれなりに男女交際もしたが長続きはしなかった。何故か分かるか? 俺には会話を続ける能力がない。仕事の話ならいくらでも出来るが女性の的を射ない話はどうにも苦手だ」
「ああ、お前、彼女出来ても直ぐ別れるもんな」
「俺は曰く、つまらない男らしい。そんな男が見合いなどして会話が弾む訳がない。俺は会話なんて無くても気を使わない相手と結婚したいと思った」
梶の気持ちはわからなくもないけど、女とはそういう生き物だ。お互い少し譲り合いながら付き合っていくもんだろ。そのうち梶の性格を理解してくれる相手が現れるかもしれない。
「まぁ、俺は男だしお前とは最初から性格も合わないから会話を続けようなんて気遣いするつもりはないけどな」
だがしかし、それと結婚は別だ。それだけの理由でまさか梶は俺と結婚しようとしているのか?
「それは俺もだ。松本みたいな奴が相手なら結婚してもいいのにと考えた。長年の腐れ縁だし、お互いの悪い所も良い所も知り尽くしている。同じ仕事をしているから話も合う」
「でもそれは飽くまで腐れ縁だからってだけだろ。恋愛感情もないし、そもそも付き合ってないのにいきなり結婚はおかしいだろ」
「だから!」
ズイ、とまた婚姻届を俺の目の前に出してきて梶は判を押す場所を指さした。
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