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第5話
こんな熱い視線の梶、見た事ない。付き合いが長い分、分かってしまう。これは本気なんだって。
「法律では無理でも結婚して扶養家族にして死ぬまで面倒を見るくらいの覚悟だ。例え提出出来ない婚姻届だろうと構わない。ここに判を押してくれ!」
婚姻届を持つ手が震えていた。俺が見た事のない梶をこの数分で沢山見てしまって処理能力が追い付いていない。
梶はクソが付くほど真面目な奴だ。女からしたら面白味に欠けるかもしれない。でも、コイツのそういう性格を俺は好ましく思う。梶と何だかんだ長く腐れ縁やっているのも、コイツがいつまで経ってもブレずに真っ直ぐだからだ。いつも本音で話せるし、悪態をついても、どんなにムカついても、俺にだけは絶対嘘をつかないって信用してるからだ。
だからきっと、こういう結論に至ったのも、それをちゃんと俺に告白したのも、俺が梶を信用してるって事を梶が知っているからだ。
「あのさ……お前、男もいけんの?」
梶の気持ちは素直に嬉しい。こんな真剣に思われたらそりゃ、俺だって心が揺れる。
しかし、俺も梶も男である事に変わりはない。結婚したいくらい好きだと言うことはよく分かったが、男と付き合った事は俺も、恐らく梶もない。
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