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第7話

「なぁ、やっぱり俺じゃイヤか? 絶対、幸せにするから考えてみてくれないか?」  俺の手を取って、両手で包み込んで額をそれにくっ付けると、梶は祈るように「頼む……」と小さく呟いた。  手が熱い。額も熱い。触れてる場所、全部が俺より熱くて俺にまでそれが伝染してくる。  お前、こんなに熱い人間だったっけ? いつも人より高いとこから見下ろしてフフンって嘲笑う様な奴じゃなかったっけ?  なぁ、ホントに俺でいいの? お前がその気になれば見合いして結婚話がまとまれば一気に出世コースに乗れるんだぞ? お前がもっとデカい仕事したいって事、俺は知ってるんだぞ?  そんなお前が俺に頭を下げてプロポーズだなんて、プライドかなぐり捨てて何してんだよ……。梶はもっと上から俺を小馬鹿にしてるくらいが丁度いいのに。 「松本……?」  不意に伸びてきた手が俺の頬に触れて、ビクッとした。  チクショー、熱いんだよ、お前の手。 「何で、泣いてる?」 「え……?」  頬に触れた手が俺の目をなぞる。梶の指先が濡れているのを見て、初めて自分が泣いているのに気が付いた。 「そんなにイヤだったか? 泣くほど気持ち悪かったのか?」  泣いてると解った途端、次々と涙が溢れて止まらなくなった。それを傷付いた顔しながら必死で何回も拭う梶。  俺はもう、言葉が上手く出ないくらいみっともなく嗚咽を上げながら泣いた。こんなにぐちゃぐちゃに泣いたのは久しぶりだ。卒業式でだって泣いた事なかったのに。

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