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「――そしたらねっ、麻美ちゃんてば驚いて「ぎょえっ!?」なんて変な声出しちゃってぇ~もうほんとおかしかったんだよぉ」
「ちょっと亜里沙ぁ!? アタシそんなカエルが潰れたみたいな声出してないんですけどっ!?」
「いや、出してたわよ。ほんっと麻美ってばもう少しおしとやかにしたらどう?」
「ムキィィィ~!!」
「あはははっ」
「……オマエら、もう少し声のトーン落として歩けよ…つか、亜里沙暑い」
「え~…」
「「ざまぁっ」」
「むぅ~!」
放課後。キャンキャン相も変わらず騒がしい三人娘が周りを囲む中、俺は帰路につこうとしていた。
けれど、
「右~!! そこだっ右サイド行けえ~っ!!」
「っ!!」
トクン、――ふじえだ、の…声。
……ああ、まただ。また、アイツの声が…俺の耳にスッと入ってきた。
こんなに、離れたところにいるのに。
「も~っ二人共ひどいよ~! ねっはやてくん、て……はやてくん?」
「? …疾風?」
「なに、どしたのハヤテ…?」
ピタリ。いきなり足を止めた俺に気づき、亜里沙たちも歩くのをやめる。
同時に、顔をどこかに固定させた俺を不思議に思ったのだろう……その視線の先へと目を向けた。
「…あれってサッカー部? あら、あの大きな声で応援してる子…なんか見たことあるような?」
「え~どのこぉ?」
「ああっあのベンチ横の男子? 確かに、どっかで見たような…」
「……藤枝。同じクラスの藤枝いつぐだ」
「…藤枝、くん? いたかもしれないわね」
「う~ん、いたような…?」
「え~いたっけぇ、わかんな~い? だってありさはぁはやてくんしか目に入ってないもん♡ あっ東堂くんもかなっ」
「はあぁ? ハイでたっあざとありさっ」
「っていうか、いい加減離れなさいよ亜里沙。そんな貧乳、疾風に押し付けたらかわいそうでしょう」
「なっ!? うっうるさいなっ奈々ちゃんの垂れ乳!!」
「何ですってぇ!? 疾風の前でなんてことを!! 垂れてないしっFカップ舐めないでっ!」
「べ~だっ!」
「ふふんっどっちもナイナイ。やっぱアタシのCカップ美乳が一番でしょっ」
「「……」」
「ちょっと無反応はやめてっ!?」
ぎゃあぎゃあ、ちょっと目を離すと始まるいつものコントよりも。
「おつかれ様! さっきのシュートめっちゃよかったな!!」
「おうっ藤枝、タオルさんきゅ。いやいや、お前らの一生懸命な応援があってこそだよっ」
「! へへっ、そう言ってもらえると嬉しいなぁ」
「……っ、」
ドクンっ、
っ、何だよ……その照れた顔はよ。
なんで、そんなに一生懸命な姿をいつも俺の目の前で見せるんだ?
「……はやてくん? 胸押さえてどうしたの、だいじょ~ぶ?」
――ほんと。オマエは何度、俺の心臓を激しく動かせば気が済むんだ?
俺の耳にも目にも、前よりももっと――藤枝いつぐの存在が、何よりも強く残って離れなかった。
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