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「……っう、あー…いってぇ…」
――結局。あの後、東子とは正式に別れる運びとなり。
今回は俺自身にも原因があるため……悪かったと素直に頭を下げ、東子の家を後にした。
もともと以前からアイツのことは鬱陶しいとうざがっていた部分があったとはいえ、今までの彼女の中で、一番最悪な別れ方をしたのかもしれない。
「……かもしれないっていうか、どう考えたってキッツイ終わり方だったけどな…」
確かに、自分は性欲に関しては淡泊な方だ。
……だったのだが。
それにしたって、
「インポ不能野郎…って、嘘だろ…俺…」
いやいやいや。
あの時勃たなかったのは事実だとしても、そんな、まさか……俺、まだ十代だぞ。
ほんとに、不能に…? …どうする、一回遼太郎に正直に話してみるか? いやでもっ、いくら遼太郎でもこんな話簡単にできるわけねぇだろっ…!? もしかして、こう言っちゃ悪いけど……相手があの東子だったから? じゃあ、他の……って、最低すぎんだろうが俺っ…!!
「……っ、とりあえず…一回自分でやってみればっ…」
突然訪れた自身の変化に、正直俺の脳はまったくと言っていいほど処理に追いついていなかった。
あまり頻繁にする方ではないものの、とりあえず自分で擦ってみれば……と、俺は焦るように履いていたスウェットに手を勢いよくかけた
――その時。
「……あ、」
ふと、一瞬目を向けた先。
そこには、遼太郎が最近ハマっているからと言い半ば強引に押し付けられた、とあるサッカー漫画のコミックスが転がっており。
「サッカー……」
……アイツも、藤枝いつぐも、
「やっぱり……一人でしたり…すんのか、な」
ピタリと手を止め。
気づいたら、俺はボソリとそんなことを呟いていた。
そう、そうだよな。
地味だなんだって言っても、アイツだって普通の男なんだし……そりゃあするに決まってる。
でもアイツ、何をオカズにしてんだろ。雑誌? それともエロ動画か? アイツのダチがアニメ好きって言ってアイツも見てるらしいし、そういう系の漫画とか見てしてるとか? 頭ん中で想像を膨らませて?
……それとも、それともまさか。
「……彼女、ってことも…あんのか…?」
――ズキリ。
「っ……」
今まで気にもとめてなかった、突如浮かび上がったアイツの『彼女』という存在に、俺の胸はこれまでとは違う鋭い痛みに襲われた。
けれどそう思うと同時に、俺はふっと自嘲するような笑みを浮かべる。
……だって、そうだろ。
「…あんなに一生懸命で、優しく笑うアイツに……彼女がいたとしても、別におかしくなんてないよな」
そう。
だってアイツは、あんなにもいつもキラキラ輝いているんだ。
キラキラ、キラキラ。アイツの周りだけ苦しいくらい眩しくて……アイツの笑顔を見るだけで、いつだって俺の鼓動はありえないくらい早く音をたてて、身体を熱くさせてしまう。
だったらきっと、きっと『彼女』なんて特別な存在には、アイツはもっと――
『……ねぇ、こっちに顔を向けてほしいな。オレ、キミともっとキスしたい』
っ、あ……、
『んっ、はぁ…もっと、もっとキミの舌味わいたいよっ…んっ』
なっ、ちがっ、ちょっと待って、俺は、
『ふ、ふは、ちゅぱっ…ん、すごい、キミの唇…すごく柔らかいんだね』
う、あ、……っ、
そんな、『彼女』を目の前にしたアイツのとびきりの笑顔を想像しようとしたはずが。
けれども俺は、何故だかそのもっと先のアイツのことを……一瞬にして、脳裏に浮かべてしまっていたのだった。
「なっ…今のっ、俺、なに考えてっ…!?」
バッと、口元を空いた手で勢いよく塞ぐ。
だが、同時に。
「――え、なん、で……」
アイツが『彼女』と舌まで絡めるほどのキスをするところを、その時のアイツの顔や声を想像したことによって……俺のアレが…ちんこが、どうしてか、しっかりと固さを取り戻し気づけば勃ちあがっていたのである。
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