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「あーっ! はやてくんも東堂くんもやっと戻ってきてくれたぁ~!! も~どこ行ってたのぉ~ありさ寂しかったよぅ~ぐえっ…!?」
「ハイそこっ、どさくさに紛れてハヤテに抱き着くの禁止ぃ~!!」
「ぐっ、麻美ちゃん酷い…!!」
「よくやったわ、麻美。ナイスプレイよ」
「ふふんっまかせてっ」
「ははっ君らはほんと、三人集まるといつも面白いコント見せてくれるよな~」
「「「コントじゃないからっ!!!」」」
「……」
昼休みがあと少しで終わる頃。
俺と遼太郎が教室へ戻ると、待ち構えていたとばかりに三人娘――特に亜里沙が勢いよくとこちらに向かって突進しかけてきた所で他の二人が止めに入り、遼太郎も交えていつものようにかしましく騒ぎだし始めた。
いつもの光景、いつもと変わりない日常。
――けれど俺の心には、前とは違う……いや、もうずっと前から存在していたけど気づくことのできなかった、 自分にとって『ハジメテ』の感情が、胸の中、溢れており。
「あはははっ、もっちーそれ本当っ?」
「っ――…」
ふいに教室の窓際、アイツの声が聞こえ、反射的に顔をあげる。
そこには楽しそうに、嬉しそうに笑う藤枝の笑顔があって。
……ああ、好きだ。
自分でも驚くくらい素直に……心にストンと、その感情が落ちてきた。
あの日、あの放課後のサッカー部の部室前で初めてちゃんととアイツを認識した……キラキラと見えたあの時から、俺はもう、藤枝いつぐに心すべてを奪われていたんだ。
たったあれだけのこと。
しゃべったことだってないし、あっちはきっと俺の名前だってまともに知らないはずだ。
それでも、今まで適当にオンナと付き合っては別れを繰り返していた、最低で、何もかも面倒くさがっていた俺に……アイツは、知らない世界を教えてくれた。
俺は、矢代疾風は――藤枝いつぐに、恋をしている。
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