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「っ、いつぐ……好きだ、大好きだ……」
生まれて初めての『恋』を知った俺は……俺の心は、幸せな想いで満ち溢れていた――のだが。
ここで一つ、新たな問題が発生した。
それは、
「お~い藤枝~。そろそろ部活行こうぜ~」
「あっうん、今行くっ。じゃあもっちーオレ部活行ってくるよ、あっ今週のイセトラはしっかり見るから!」
「了解でありますっ、明日はイセトラの感想を存分に語りまくりましょう! 部活頑張ってきてくださいね、いっつん!」
「ははっありがと~!」
「ぁ、……っ、…ぐっ…」
「は~今日も一日お勤め頑張ったなぁ~っと。……ん? 疾風、そんな所で固まってどうしたんだ?」
「っ、何でも…ねぇよ…!!」
「???」
恋を自覚してから今の今まで――俺がまったくもって、『いつぐに一切話しかけれない』ということであった。
いや、もともと自覚する前から話したことなんてなかったけどよ。
それでも、好きになった相手と色々な話がしたいと思うのは、別におかしなことじゃない……はず、だ。
だから俺は、あれから何度も校内でいつぐに話しかけようと試みるも。
「っ、あ……ふ、ふじっ…っ」
どうしても……どうやっても、本人の半径二メートル近くまでいくと、勝手に身体が固まり、足が竦み……声もまったく出せない状況になってしまうのだった。
っ、何だこれっ……何で俺は、挨拶の一言すらアイツにまともに出来てねぇんだよ…!?
今までオンナだろうが年上のヤツであろうが、ズケズケと遠慮なく物言いしていた俺が、何でこんな、こんなことに……っ。
これが恋をするということなんだろうか……とも考えたが、俺に対していつも好きだのなんだの言ってくる三人娘や元カノたちのあの暑苦しいくらいの積極性を思い出してみると――
…っ、言いたくはないが……俺はかなり、こと恋愛に関しては『臆病』なヤツなのかもしれない。
……クソダサすぎるだろ、俺。
そうして、好きな相手に対し今日も何も出来ず仕舞いだった俺とは逆に。
「ハヤテっ、今日こそはアタシと新しくできたカフェでお茶の約束果たしてよね!!」
「あ~麻美ちゃん約束取り付けてたなんてずっこいんだぁ~!」
「一番知らぬ間にズルい抜け駆けばっかりしてる口が何か言ってるわ。まぁ、カフェは私も御一緒させてもらうけど、ふふっ♡」
「えーっじゃあありさも一緒に行くぅ~♡」
「はぁっ!? ちょっ、ふざけんじゃないわよっアタシとハヤテだけで行くっつーの!!」
「……オマエらって…っ、すごいよな……」
「「「!!? きゃあああっ褒められちゃったあぁぁぁ…♡♡♡」」」
今日も今日とて恐ろしいぐらいに積極的な三人娘は、俺をそのままずるずると放課後強制的デートに連れられていったのだった。
――ちなみに言っっておくと、俺は今まで一度だってこいつらの誘いにきちんと「わかった」と了承したことはなかったりするのだが……まぁその話は別にいいか、めんどくせぇし。
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