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   そんな中、俺にとってのビッグチャンスとなりうる出来事がある日突如としておきた。  いや…俺もだけど、それ以上に―― 「なっなっなんとっ!! いっつん今度の練習試合に出れることになったのですかっ、おめでとうございます!!」 「っ、ありがとうもっちー! …で、でもちょっと声大きいよっ…シーっ!」 「はわっ! …すっすみません、嬉しすぎてついっ…」 「はは、と言ってもたぶんほんのちょっとだけだと思うけど……でも、初めてのことだし、ほんとっオレ頑張るから…!」 「はいっ頑張ってください!!」  っ!! ……ま、マジかよ……いつぐが、サッカーの練習試合に出るだって……!?  詳しいことまでは聞き取れなかったが、朝の教室でそういつぐともっちーとやらが話しているのが聞こえ、俺も教室に入ってすぐ、遼太郎と三人娘への挨拶もそこそこに驚きで目を見開いた。 「え~なに~? あそこ何の話で盛り上がってるのぉ?」 「練習試合…? ああ、あの子確かサッカー部の…なんて言ったかしら? 藤崎くん?」 「えっあの地味男くん、藤波じゃなかったっけ?」 「いやいやいやっ、藤枝くんだからなみんなっ。それにしても……ははっすっごい喜んでるなぁ、あいつっ!」 「? 何で東堂くんまで嬉しそうなの~?」  後ろで声のした方を見ながら話してる遼太郎たちと同じく、俺もいつぐのいる方向へと視線を向ける。  そこには、初めて練習試合に出れる喜びを噛みしめ、もっちーと喜びあっているいつぐの嬉しそうな姿があり。  っ、アイツが喜んでるだけで……何だろう、俺もすげぇ嬉しくなってくる。  好きなヤツが幸せそうにしてるのを見るだけで、自分自身もこんなにもあたたかい気持ちになれることに、俺はまた一つ、いつぐに新しい感情をもらえたのだと喜び   ――そして同時に、いつぐのことがもっと『好き』になっていく。  けれど、ハッと我に返り。  っ、そうだ……今ならさっきチラッと聞こえてたんだけどよ…とか言って、いつぐに自然に 「……練習試合頑張れよ、藤枝」  ってな具合に話しかけれるんじゃねぇかっ…!?  いや、まったくしゃべったこともない俺からそんな風に声をかけられたら、いつぐ自身はもしかしたらめちゃくちゃ不信がるかもしれないけど。  っ、だが、今しかない…!!  そうしてタイミングよく「ちょっと、ホームルーム始まる前にトイレ行ってくるね」と言い、俺たちがいる場所の脇から教室を出ようとこちらに向かってくるいつぐに、俺は―― 「――っ、あ、…あの、よっ…!!」 「えっ……え、あっオレっ!? …ですか?」 「あ、し、しあっ――……っ、いや……と、扉の前、占拠して悪かったな……」 「へっ? ……あっ、ど、どうもです…?」 「……別に」  …………俺は馬鹿なんだろうか。

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