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「いけーーっ!! いっつんそこです! あっ、ああっ惜しいっ、ドンマイですよーいっつん!!」  とある週末の土曜、時刻は午前十時半。  この日、俺たちの通う高校――県立砂篠原高等学校(けんりつさしのばらこうとうがっこう)のサッカー部と、相手校である県立向井霞高等学校(けんりつむかいがすみこうとうがっこう)サッカー部の練習試合が、向井霞高のグラウンドで朝早くから盛大に行われいた。  第二試合途中から、事前に言われてた通りサッカー部部員であるいつぐも試合に参加する運びとなり、先程から、他の選手に交じり必死にボールを追いかけている。   ……っ、一生懸命走ってるいつぐ、すげぇかっけーな……それに、試合用ユニフォーム姿もめちゃくちゃ似合ってるしよ。  頑張って走り回ってる……一回すごい勢いでコケたが、いつぐの勇姿に、俺の心臓はもうずっと前からバクバクと激しく動いており、同時に身体中が沸騰したみたいに熱くなっていた。そして心の中でがむしゃらに走るいつぐに向けて、柄にもなく必死にエールを送り続けていた。  但し、 「ははっ、あいつもすごい頑張って応援してるなぁ~。よしっおれもたくさん応援しなくちゃだな! ――ところでさ、疾風は何でさっきからそんな頑なに物陰から出てこようとしないんだ?」 「っ、」  ワ―キャーといくつもの声が重なり響き合っている大勢の応援客が集まる場所から外れた、でかい木の陰からだけども。 「おっそこだいけいけっ砂篠原~!! …にしても、ほんとビックリしたぞ。まさかお前が一緒にうちのサッカー部の練習試合に応援に来てくれるなんてなぁ」 「っ……別に、暇だったし」 「えっでも、今日ほんとは確かあさみんとデートじゃなかったっけか?」 「デートじゃねぇよ、麻美が服見に行きたいつってただけだ。つか、そもそも明日の土曜に行こうよって誘われた時点でその場で断ったつの」 「そうだったんか、昨日の放課後妙にあさみん静かだったなと思ったらそういう……でも、珍しいな」 「あ? 何がだよ」 「いや、めんどくせぇとか言いながら、疾風って何だかんだいつもあさみんたちに付き合ってあげてただろ? だからちょっと驚きだなぁってさ。まぁそれだけ応援に来たかったってことかな!」 「だっ、だからちげぇっての……っ、」  未だ木陰に隠れるようにして試合を、いつぐの頑張りを見つめていた俺に対し、傍らに立ちでかい声で応援しながらも遼太郎が疑問の目を向ける。  まぁ、今までの俺のことを知っているコイツからしたら、俺がわざわざ休日に他校まで足を運んで自身の高校のサッカー部の練習試合を見に来ているとか、驚き以外の何ものでもないよな。  だが、そんなはずの俺がここに来た本当の理由などいくら遼太郎だからと言えるわけもなく、俺はぱっとごまかすように視線を逸らし、反対に遼太郎に質問を投げかけた。 「オマエこそ何で応援に来てんだよ。サッカーになんて、今まで興味なんてなかっただろうが」 「え~そんなことないぞ、おれ最近サッカーに割とハマってる方だしな。ほらっお前にもサッカーの漫画貸しただろ?」 「! …ああ、イナズマプリンスってヤツか」 「そうそれっ、見てくれたのかっ」 「いや全然」 「ってあちゃ~見てないのかっ」 「今度返す」 「見てないのに!? ははっわかったよ。まったく、こういう所は相変わらずだなぁ……でも疾風、なんか最近変わったよな」 「! ……変わった?」  コイツこそ、何でいきなりサッカーに興味なんか示し出したんだ……と思っていた所で、突然、遼太郎がグラウンドではなく俺の方に身体を向け、そう言ってきた。

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