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「おっ疾風はっけ~ん。どした? 最近体育真面目に出てたってのにさ」 「……眠かったんだよ」 「あははっなるほどな。夜はちゃんと寝ないとおっきくなれないぞ~」 「っ、うるせぇよ」  チャイムが鳴ってからしばらくして、クラスのヤツらがわいわいがやがや教室にぞろぞろと戻ってくる中。  頭を抱えるようにして席に座っていた俺のもと、遼太郎がいつもの明るさで声をかけてきた。  しかし、その後すぐに教室に入ってきたもっちー……違う望月だ、っ、すっかりいつぐの呼び方が移っちまってる……望月と一緒に戻ってくるかと思われていたいつぐの姿はそこにはなく。 「! ……な、なぁおいオマエさ」 「え……」 「オマエだっつーの、望月っ」 「ヒエっ!!? えっ、えっぼ、ボクでありますかっ…!?」 「だからそう言っ……いや、わりぃ。っ、アイツは……藤枝は、一緒じゃないのかよ」 「えっあ、あのっいっつんは、えとあのっ……」 「あ?」 「ひゃふっ…!?」 「こらこら疾風っ、顔と声が怖いことになってんぞ。そんなんじゃ望月も答えられるもんも答えられなくなるだろ?」 「んだよ、俺はもともとこんな顔と声だっての」 「美形の奴は少し凄み持たせるだけで迫力出ちまうのをもっと自覚しような。ったく、最近柔らかい表情するようになったと思ったらこれだ。ごめんな望月、疾風悪気があったわけじゃないからそんなに怯えなくても大丈夫だぞ、なっ!」 「!! ……っ、あ、はい。こちらこそ…すっすみませんでした…そっそれであの、い、いっつんはですね、そのっ…」 「藤枝くんなら、サッカーの対決最後の方で伊波くんにボール間違えて当てちゃってさ。それで謝りながら一緒に保健室に付き添っていったぞ」 「結局テメェが答えるのかよっ…!? って、は? いつ……っ藤枝のヤツが、ボールをいなみに当てた…って」 「で、合ってるよな、望月?」 「っ! …あ、はっはい…そうです」  …いつぐ、ボール当てたって…大丈夫か? 絶対焦っただろうな…相手のこと、きっとすごく心配して……っ、ああ、俺が傍にいれば防げたかもしんねえのに……そしたらいなみにも……ん? 「いなみって誰だ? いたか、そんなヤツ?」 「ちょっ……まったく、ほんとお前は興味ないヤツにはとことん無関心だなぁ。伊波だよ、伊波コウくん。ほらっおとなしめでよく分厚い本読んでる、中性的な見た目の」 「……ああ、いたかもな、そんなヤツ」 「! なっなんと…あの女の子みたいに綺麗と評判の伊波くんに一切興味を持ってなかったとはっ…さすが美形リア充っ!!」 「あ?」 「ひょへっ!? すっすすすすみませんんっ!!」 「だから疾風その顔っ。望月、怖くないぞ。ほら顔あげろって」 「あ…は、はい…」 「うんオッケーだ、ははっ」 「っ……あぅ」 「……何で俺が悪者みたいになってんだよ」  そのまま何だかわからないが、遼太郎と望月が妙に楽しそうに話しこみ始めていた傍ら。  俺はいつぐを心配しつつも、反面すぐに戻ってこないことにどこか安堵した気持ちのまま、異様に長く感じる五限後の休み時間を過ごすこととなったのであった。  その後、いつぐと…伊波だったか? が、六限の途中頃に教室にようやく戻ってきた。  充分に時間が空いたため、もしかしたら大丈夫かとも思ったのだが――…

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