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「――…」
「……あの、さ、矢代くん」
「っ違う……っ!!!」
「へっ?」
「ちっ違う違う違うっ…!! 違うんだっ、これは違くて、そのっ、ほんとに、違う、ちがっ……」
「!」
――ああ、やった……やってしまった。見つかってしまった。
だから言っただろう? あんなに何度も何度も危険だと警告しただろう?
それなのに、俺は自分の欲望ばかりを優先して、好き勝手に行動して……その結果が、これだ。
こんな、これ以上ないってくらいに最低最悪なバレ方をしてしまうとか、
本当にもう、
「……めん」
「え…?」
「ごめん……ごめんな、藤枝。俺、こんなことして……っ、こんな気色悪い、変態なことして……ほんと、ごめん」
「矢代、くん」
「謝っても許されることじゃねぇのはわかってる……だけど、っ、おれ、俺は……」
「……あのさ。間違ってたらごめん……えっと、もしかしてその、矢代くんはオレのこと……そ、そういう意味で好き、だったりするのかな」
「っ!!」
勝手に部室に入って、こんなコトをしでかしてしまった俺がただ謝ったぐらいでは、きっと何も解決しない。
けれども他にどうしようもなくて、何度も謝罪の言葉を震えながら口にする俺に、突如、目の前のいつぐはそう問いてきたのである。
驚きでバッと顔をあげると同時、
「……オレのこと、好き?」
「――…」
どうしてか、俺の瞳が捉えたいつぐは――優しく、微笑んでいて。
だから、
「……っ、好き、好きだ……ごめん、俺、藤枝が…いつぐのことが好きなんだ。こんなっ…こんなコトしちまうぐらいに大好きで、っ……オマエに、いつぐに犯されたいって、毎日っ毎日思うほどに、いつぐを愛しっ……んっ」
――ガチッ、
「っ、たたっ……はは、歯が当たっちゃった」
「……え、」
「ごめん矢代くん…お恥ずかしながらオレ初めてで、上手に出来なかったよ」
「あ、え……いつ、ぐ、い、いま……」
「うん、オレ、キスしちゃった…矢代くんと」
「き、す……っ!!!?」
「わっ!?」
何故、笑っていたのかはわからない。
でも、いつぐのその優しいずっとずっと向けられて欲しかったあの笑みを目にし、それが自分に微笑みかけているのだと理解した途端、オレのぐちゃぐちゃでドロドロの、胸の奥底に秘めていた言葉たちが、気づけばぽろぽろと、自然と口から溢れ出ていた。
そうして、『愛してる』と最後に口にしようとした俺に、
目の前のいつぐは――キスを、してきたのである。
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