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   ほんのちょっと唇に触れるだけ、寧ろその先の歯と歯が当たるソレだと呼べるかわからないモノであったが、しかし間違いなく、いつぐがオレにしたのは『キス』であり。  認識した瞬間、ぶわわっと顔が……いや、身体中が沸騰したかのように熱く燃え上がり、俺はバッと腕を顔の前に持っていき俯いた。  何で、どうして、いつぐが俺にっ……つーか俺いま、いつぐとき、キスしたのかっ……!!? 「やっ矢代くん、顔すごく真っ赤だよ…!?」 「うっうるさい見るなっ……っ、み、見ないで、くれっ…」 「っ……」  わけがわからない、何だこれ、何が一体、どうなって。  どうして、 「っ、何でこんな変態ヤローに…キスなんてしてんだよ、オマエはっ……」 「! …それはえっと……したくなった、からかなぁ?」 「!? な、何言って…」 「いや、変態野郎とか、気色悪いとかさっきから色々矢代くん言ってるけどさ……でもオレ、最初にキミのその姿見た時から別に気持ち悪いとかそういう感情は全然なかったんだよ、自分でも不思議なことに」 「は……え、そう…なのか?」 「うん、まぁもちろん死ぬほど驚きはしたけどね」 「っ、」 「それにほら、その証拠に……ココ、」 「ココって……なっ、おまっ!!?」 「…あはは、ど、童貞丸出しで、お恥ずかしいっ…」 「――…」  ……ぽかんと、開いた口が塞がらない。  突然キスをされたことで大混乱状態であった俺に、追い打ちをかけるかの如く、いつぐが気持ち悪いと思わなかった『証拠』として見せ示したのは――制服上からでもはっきりとわかるほどにその存在を主張した、膨らみあがっているいつぐの股間であり。  な、んで、いつぐのソコが大きく……?   え、何を見て……もしかしなくても、俺のアレを見て……って、どういうことだよ。  本当に、マジでわけがわからない。  もう何が何だかで、今にもぶっ倒れそうになっている俺に、 「……そりゃあ、びっくりするよね。っていうか、オレも今の自分自身にめちゃくちゃ驚いてるからさ……でも、何でかな。オレ、現在進行形で目の前の顔を真っ赤にしちゃってる矢代くんのことを、可愛いなぁ…って思っちゃったりしてるんだ、はは」 「!!? か、可愛いって…」 「えっと、そういうわけなので……矢代くん」 「っ、なん、だ、」 「矢代くんがどうしてオレを好きなのかとか、いつから好きなのかとか……っ、どうして、この部室でオレのジャージを使ってオナニーをしてたのか……とか、色々たっぷり聞きたいことはあるんだけど、さ」 「――まずは二人で一緒に、気持ちよくなってみませんか」 「!!」  そう言って、いつぐは頬を赤くしながら、優しく微笑みかけてくれた。  ……ああ、もう。ほんとにコイツには、適わない。 「っ、気持ちよくなる、から」 「えっ」 「…お、俺にもう一回、キスしてくれ……い、いつぐ」 「! ……うん、疾風くん」  『藤枝いつぐ』という存在を認識し、生まれて初めての恋心を自分の中で芽生えさせてから、ひと月。  心臓が壊れるんじゃないかっていうくらいに激しく音をたてながらした、大好きなヤツのとの二度目のキスは、  今までで一番気持ちよく、幸せでとろけてしまうような、そんな初めて味わうキスだった。  

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