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「あのさ疾風くん、ひとついいかな?」 「っ、な、なんだ…?」 「うん。少し気になったんだけど、さっきまでここでオナニーしてた時の疾風くんって、教室で友達と話してる時の口調と全然違ったよね?」 「……は?」 「いつもきつそう…とは違うか、ぶっきらぼう? なんていえばいいかな、とにかく教室でしゃべってる時とはまったく違う感じのすっごく可愛い口調でえっちなこといっぱい言っててほんと驚いちゃったなぁ」 「!!? な、いや、それは」 「あとオレのジャージを『いつぐの匂い♡』って言いながらクンクン嗅いでたけど、オレってそんなに汗くさい? 自分では見た目通り匂いも地味だと思ってるんだけど……ね、味もするって言ってたけど、オレの味ってどんななのかな?」 「っ、あ、あれはだからっ…」 「それとオナニーしてる時さ、割と躊躇いもなく後ろ…お尻も使ってたけど、もしかして結構前から後ろでおな」 「あああああもうだまれっやめろおおぉぉっ!!!」 「!! ご、ごめん気になってつい……でも、ははっ疾風くんってそんな大声出せるんだな、何だか今日は色んな疾風くんが見れて驚きだなぁ」 「なっ……っ、オマエ、もしかしなくても実はドSなのか…」 「えっオレが? そんなまさかっ、オレは至ってノーマルな地味男だよ?」 「いや、どう考えても無自覚Sだったぞ……ぐっ、俺のいつぐがそんなっ……」  オナニーをしていた疾風くんの少し気になった部分をいくつか疑問に思い聞いてみただけなのだが、何故か彼からドSの刻印を押されてしまった。いやいやいや、オレにそんな性癖ないですからっ。  俺のいつぐが……と未だショックを受けている風な目の前の疾風くん。  一体彼の中で、オレってどういう感じに育ってるんだろう……何だかわからないけど、 「あの、オレ地味男は地味男だけどさ、でも結構ひねくれた性格だったりもするよ?」 「は、ひねくれた…って、いつぐかが」 「そう。オレ心の中だと言葉遣い悪かったりするし、疾風くんのことも前までけっリア充乙とか思ってたし、さっきのオナニー見てる時も、わ~びちゃびちゃで汁ドバドバ…だとか下品なツッコミ入れまくってたしね」 「ま、マジかよ……」 「まじまじ、大マジだよ」 「そ、そんな……サッカーしてる時は、あんなに一生懸命でキラキラ眩しいヤツだったのに、」 「! キラキラ眩しくはない…と思うけども、あれも本当のオレなのは確かだよ。相変わらずサッカーは全然うまくなんないけど、やっぱり楽しいしさ」 「っ……」 「どっちも含めてのオレだけど……やさぐれてる部分もある、こんなオレは嫌?」 「――…嫌に」 「え?」 「嫌になるわけねぇだろっ、どんないつぐだって俺は大好きだっつーの…!!」 「!! …そっか、うんありがとう疾風くん。そう言ってもらえて、オレすっごく嬉しいよ、へへっ」 「……だ、から…その笑顔ずりぃっての…ああ、もうっ…」  けっして良い子ちゃんとは言えない性格をもっていることを、オレは疾風くんへと正直に伝える。  もしかして引かれてしまうかな……と、胸がズキリと痛んだが、けれども疾風くんは『大好きだ』と強い瞳と言葉で伝えてくれ、オレはこみあげてくる嬉しさから、気づけば自然と顔を綻ばせていたのであった。  あ、また疾風くんの顔が赤くなってる。可愛い……どうしよう、すごく可愛いなぁ。  ――でも、そうか。 「疾風くんって、オレがサッカー部に入ってること知っててくれたんだ」 「!」 「オレ、万年補欠で試合にも全然出れない…そんな奴だから、まさか疾風くんに知ってもらえてるとは思わなかったよ、はは」 「……つーか、それがきっかけだし、よ…」 「え、」 「っ、だから俺がオマエを好きになったのは――…」    サッカーしてる時は……と疾風くんが放った台詞から、彼がオレがサッカー部に所属していることを認識していてくれていたのかと聞いてみると、言葉を詰まらせながらも、疾風くんはオレに今までにあったことを全部話してくれた。  話し終わる頃には、疾風くんの顔は先程よりもずっと真っ赤になっていて。 「っ――…」  そして彼の話を全て聞いてしまったオレもまた、疾風くんと同じ……いや、それ以上に顔を真っ赤に染め上げさせ、その場にまるで直立不動のように固まってしまったのだった。

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