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第8話

「狩野さんは……」  そう。できれば、彼に教えて欲しかった。  手取り足取り、優しくゆっくりと。  ところが、せっかく見つけた狩野は、初心者の女子社員数名に囲まれて、コーチの真っ最中だ。  とてもあの中に入って行く勇気は、無かった。 「仕方ない。独学でやろう」  周りを見渡すと、ボーゲンでゆるゆる滑っている子どもが何人かいる。  あれなら、何とか真似できそうだ。  膝を曲げ、足を寄せ、見よう見まねでボーゲンを始めた悠希だったが、すぐに転んでしまった。 「悠希くん」  女子社員をコーチしながら、智久は悠希の姿を気にしていた。  何度か滑ったり転んだりを繰り返していた悠希だったが、やがてスキー板を足から外してしまった。

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