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第9話
「もう、つまんないよ。全然滑れないんだもん」
独りで膨れていると、颯爽と滑り降りて来た人間が悠希のそばに止まった。
「悠希! 楽しんでるか!?」
「父さん!?」
まさか、父がこんなにスキーが巧かったとは!
(だったら、僕に教えてくれればいいのに!)
しかし、自分から教えを乞うのは癪だ。
そんな悠希は、スキー板を履いていない。
克也はそれを見て、言った。
「何だ、もうやめたのか?」
「だって、全然滑れないんだもん」
「じゃあ、リフト券は要らないな! 父さんにくれないか? もう10枚使い果たしてしまったんだ!」
信じられない!
我が子が滑れないと聞いておきながら、そのチケットをむしり取るような真似を!
悠希の気持ちとはうらはらに、克也は息子からいただいたチケットでリフトに乗って上へ昇って行ってしまった。
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