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第11話

「狩野くん、私の部屋にベッドが一台しかないんだが?」 「え? 部長は悠希くんと合い部屋でしたよね?」  二人分のベッド二台が用意されているはずなのに、なぜか一台しかない。  問い合わせてみると、ホテル側の手違いだった。 「お詫びにホテル代を割引します、とは言ってますが」 「なぁに、構わんさ。悠希と私とで、同じベッドに寝るよ」 「父さん、それはちょっと……」  大柄な父と一緒に寝ると、潰されそうで怖い。  それに、克也のいびきや歯ぎしりで、睡眠不足になるのも御免だ。 「もしよかったら。悠希くん、私と同室でどうかな?」 「狩野さんと?」  それは素敵だ、と悠希は内心踊り出しそうだった。  彼は、すっかり智久の虜になっていたから。

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