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第5話
「ひ、一二三。あの……」
オレは独歩に近付いて、ネクタイを引っ張った。
「いつもこうなの?相手から手を出してもらうのを待ってる?いくらなんでもそれじゃ枕営業なんて無理っしょ?」
「一二三、頼む。待ってくれ」
いつも青ざめた顔をしている彼の顔色は最悪に悪くなっていた。
それにすら、オレは独歩らしくて欲情していた。
「なに?待ってたらサービスしてくれんの」
握りしめたネクタイを力任せに引っ張り、その苦しさでか、独歩は後ろにあったベッドに倒れた。
「独歩。オレは独歩を縛りたくないよ。それにお前がどんなふうに仕事をしてるのか、枕営業しててもオレはするななんて言えない」
そのまま彼の上に覆い被さり、視線を合わせた。
「オレはホストだし。愛を売る仕事して、独歩に枕営業やめろなんて言える資格ない。だから、オレにも同じ気持ち味あわせてよ?」
「む、無理だ。……仕事と一二三じゃ意味が違うっ」
独歩は泣きながらオレを見ていた。
その潤んだ瞳には独占欲丸出しのオレが写っていた。
こんなオレは独歩に見せたくない、そう思っていた。
シラフの彼にはオレの本性を見せたくなかった。
こんなにも醜いオレは嫌なのに、どうしても止められなかった。
「せめて今オレを誘ってよ。そしたらこれからも枕営業するのも許してあげるからさ」
「え……許すのか?お前にとって、俺はそんな小さい存在なんだな……」
「本当なら止めさせたい。けど、オレには言う資格ないし。なら独歩だってオレにホスト辞めろって言う資格だってあるのに、言わないし。言ってくれないだろ」
オレは独歩にホスト辞めてくれと言われたら辞めるつもりだ。
月に3億稼ぐオレだ、もう一生二人で過ごす金なんて貯まってる。
けどオレはホストを辞めてない。
独歩と過ごすには、独歩より優れたオレがいなきゃいけない気がして、辞めることなんて出来なかった。
独歩の劣っていることに、オレの何か勝ってないと隣には居られなかった。
オレはサイテーだった。
けどそれもオレだから仕方がない。
「俺は……最低な人間だ。ここでお前を誘うなんて、罪悪感で出来ない」
「罪悪なんて気にしないでいいよ。でも独歩のそんな繊細なとこ、オレは好きだよ」
オレは独歩の顔に自分の顔を近付けると、泣いてる独歩が唇を重ねてきた。
「すまん、一二三」
「オレもごめん」
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