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現在 -6
カイトはベッドの上でしばらくもがいていたが、それを面白がってしつこく舌を入れてくる佐東の様子に、ついに疲れ果てたのか、やがてぐったりとし、とうとう動かなくなった。
感情の抜け落ちた瞳で、顔の上を動き回る佐東を見ている。
それを確認して、佐東がようやくカイトを解放する。顔をあげて座りなおすと、含み笑いを浮かべたままカイトを見下ろした。
カイトは佐東が離れてもそのまま天井を見上げている。無表情だったが、憮然としているようにも見えた。
だが、佐東が「起きろ。」、とひと声かけると、のろのろと、無表情のまま、時間をかけて言われたとおりに起き上がり、マットの上にぺたんと座って、またゆっくりとうつむく。
佐東はカイトの正面にひざをつく形で立ちあがった。そしてなにも言わずに、手をカイトの頭の後ろにまわしてつかむと、前に引き上げようとし始める。
「……っ」
と、カイトはそこで静かな抵抗を始めた。首に力を入れ、頭を上げようとしない。佐東の大きな手はカイトのあごまでつかんで、さらに自分のほうへと引っ張る。
カイトは手をつき四つん這いになりながらも、歯をくいしばり頭を振って佐東の手から逃れようとしたので、次の瞬間、佐東はカイトの髪の毛を思いきりつかんで引っ張った。
「いっ…!」
無理矢理上を向かされたカイトの顔は、苦痛にゆがんでいる。
「どうした。これは“トロフィー獲得済み”だろ?」
「ううっ…!」
髪をつかまれたまま上に引き上げられ、カイトの口から思わず小さな悲鳴があがる。
「…やれるな?」
カイトは歯をくいしばったまま、今度は必死に軽く何度かうなずいた。
(…不愉快だな。)
やはりカイトが痛めつけられるところは見たくない。
(早く離してやれよ佐東、痛がってるだろ。)
「…よし、」
佐東はぱっ、と手を開いてカイトの髪から手を離した。カイトが再びがっくりとうなだれる。
「早くやってみせろって。」
カイトの目の前にある佐東のそれを、口でなんとかしろと言っているのだ。“トロフィー獲得済み”、ということはすでに、“訓練済み”なのだろう。
…だが、当然、いやだろうな。
自分の大嫌いな人間のそこをくわえる姿を、僕の前で、しかもカメラに撮影されながら披露するのは。
カイトは動かない。息を震わせながら目だけでちらりと僕を見た。
その瞬間に、ぞくりとする。
(…いいね。その目。)
痛めつけられるキミは見たくない。…でも。
「おいカイト。どうした。」
「…あのー、悪いんですけどそういうのは別に見たくないんですけど。」
佐東は急に僕から話しかけられて、きょとん、とした様子でこっちを見た。
それから、すこぶる悪い顔をする。
「…じゃあ、なんなら見たいんだ?」
(なにが見たいって?)
そんなの決まってる。
「カイトくんが、めちゃくちゃイきまくってるとこが見たいです。」
「へっ?」
自分の希望とはだいぶ違っていたんだろう、佐東は間抜けな声を出した。
「なんだよソレ。俺はどうなるんだよ。俺だってイきまくりたいんですけど。」
ボサボサになった前髪の隙間から、またカイトの目が見えた。僕をにらみつけている。頬やあごが細かく震えている。恥ずかしさと、悔しさと、…激しい怒り。
(――たまらないな。)
「おいおい、悪い顔してんな、お前。」
そうか。あんたと一緒だな。
「…まあいいか、俺のほうは後で。こいつが世話になった泉水ちゃんからのご要望だもんな。…勝手をやった罰としてほんとはめちゃくちゃ泣かしてやりたいとこなんだけど、俺としては。」
それなら大丈夫。彼はきっと泣くよ。君が大嫌いなのに、我慢出来ずに君にイかされるんだもの。それがどんなにいやなことなのか、僕には少しわかるんだ。
佐東がベッドの上にカイトの背中を押し付け、そこに自分の大きな体を重ねると、カイトは重たそうに短くうめいた。
佐東がカイトの体に“巻きつき”始める。
佐東は、カイトの両腕を頭より上にあげさせ、そのまま長い左腕を背中に回して、右手で後ろから頭を包み込むようにしてカイトの首筋を伸ばした。そこに自分の顔をうずめる。
「…ぅ…」
いやでたまらないだろう。大嫌いな人間の舌が、自分の耳を、首を、這いながら落ちていくのだ。
佐東は唇で軽く音をたてながら、舌先でゆっくりとカイトを味わう。彼のその屈辱と、絶望とともに。
胸の突起を探られると、カイトはそこで驚くほど大きく跳ねた。
「―― つ…!」
「…大丈夫だ軽く噛んだだけだろ、大げさなんだよお前は。」
「先輩、」
「わーかってるって、泉水。ついだよ、つい。もうしないって。」
ろくでなしめ。カイトをイかせればそれでいいんだよ、むやみに傷つけるな。
「ごめんなー、もうしないからなあカイト。」
口ではそう言われても、それからの佐東の口付けはもはやカイトにとっては恐怖でしかなくなる。ある種の、“暴力”だ。いつまた咬まれるか。佐東が口を動かすたびに、カイトは震えなければならなくなった。
「はっ!…ぅ…!」
カイトが苦しそうにのけぞる。また噛まれたか、つねられでもしたかと思ったら、背中にあった佐東の左腕がいつの間にかカイトの腰まで下がっていて、カイトの体のくぼみに沈みこんでいる。
「…や…い、や…あ」
太い指がうごめいているんだろう。カイトはのけぞり、首筋を、胸を、魅力的に震わせる。
「あっ、あ…」
佐東の舌がカイトの中心に巻き付き始め、カイトはついに腕を下ろして佐東の髪をつかんだ。
「よせ。」
佐東は少し顔を上げ、“そこ”を持ち上げていた手でカイトの手を叩くようにはらう。
はらわれた手はベッドの上を軽く跳ねて、震えながらシーツを強く握りしめた。
もう片方の細い手は、いじらしくカイトの頭のうえで枕を握ったり離したりしている。
「…ぁう…、や、ぁ…っく…う」
佐東は肩にカイトの細く引き締まった足の片方をのせ、音を立ててカイトのそこを刺激し、辱めている。
佐東の右手の親指が滑らかにカイトの白い胸を撫でると、
「っあ!」
…カイトは、さらにいい声をあげた。
佐東の左手の指先がカイトを犯す模様は、パソコンの左下の画面からうかがい知ることができた。
(特等席だな。)
素晴らしい余興にまた笑ってしまいそうになり、指でそっと顔を隠す。
佐東の舌はカイトをますます激しく凌辱し始め、限界なのか、カイトはすでに抑えることもできずにかわいい声をあげ続ける。
「…ア、…ァアんっ、ア…う…ッ」
胸と腰とが激しく上下し、頭は必死に上へ上へと逃れようとする。
カイトの声は少し遅れてパソコンのモニターからも届けられていた。カイトも気づいているらしく、聞きたくないのだろう、声を必死に抑えようとする。だがかわいい口からは次々と抑えのきかない屈辱的な声があがり、カイトはその度に頭を小さく横に振った。その様子は、もちろん佐東を喜ばせる。
佐東はさらに執拗に、カイトの敏感に反応する部分をもてあそんだ。
-----------→つづく
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